INTERVIEWSDecember/16/2016

[Interview]BADBADNOTGOOD − “Ⅳ”

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 トロントを拠点とするインストゥルメンタル・ジャズバンド、BADBADNOTGOOD。2010年に結成した彼らは、その1年後には『BBNG』、『BBNG2』をBandcampにて公開し、2014年には〈Innovative Leisure〉から『Ⅲ』を発表。そして今年7月、最新スタジオアルバムとなる『Ⅳ』をリリースしている。

 トロントにあるHumber Collegeにてジャズミュージックを学ぶ大学生だった彼らが世界から注目を集めたきっかけは、Odd Futureのメンバーの楽曲をカヴァーした動画シリーズ『The Odd Future Sessions』であった。その後、OFWGKTAのTyler, the Creatorとは、「Seven」、「Orange Juice」、「Fish」といったセッション映像を発表し、同じくFrank Oceanとは彼のバックバンドを務めるにまで至っている。

 BADBADNOTGOODは、11月18日、渋谷WWW Xにて、バンドとしては3回目となる来日公演を開催。同公演前、最新アルバム『Ⅳ』を中心に、その詳細を知るべくメンバーに話を伺った。

__6月の来日公演、そしてSummer Sonic 2016での出演を経て今回の来日公演が3回目となりますが、日本のオーディエンスと他国のオーディエンスの違いや日本での公演で意識していることがあれば教えてください。

Chester Hansen(以下、Hansen):日本は音楽の愛好家が多いし、音楽を愛する姿勢が伝わってくるよ。例えばお店に入った時にジャズが流れてくるくらい日本ではジャズがメインストリームになっていると感じるし、僕たちのお客さんもジャズ好きが多い気がする。だから僕たちが実験的なジャズを演奏しても受け入れてくれている気がするよ。

Alexander Sowinski(以下、Sowinski):あと、僕たちはまだ日本で3回しかライブをしていないから、まだ日本のオーディエンスのイメージを把握しきれていないんだ。僕たちのライブ以外でのオーディエンスというのもそうで、例えば日本のショーではSummer Sonic 2016でRadioheadのライブを見たけれど、そこでしか見ていないから、まだ日本のオーディエンスはどうだってことは僕たちには言えないね。

でも分かっていることは、日本のお客さんは僕たちに対してポジティブな反応をしてくれるし、エネルギーもすごく良い感じだと思う。いつだったかは覚えていないんだけど、日本では風営法でダンスが禁止されていた時があったと思うから、今回のライブでは皆踊ってくれると良いなと思うね。

__よりヒップホップ色の強かった前作『Ⅲ』から今作『Ⅳ』を作るにあたって、環境や心境の変化があれば教えてください。

Hansen:2つの作品の比較というよりも、僕たちがバンドとして徐々に進化していっていると考えてもらえたら良いね。例えば『Ⅲ』の前の作品を見てもらっても、そこから進化して『Ⅲ』が出来て、それが結果としてヒップホップ色の強い作品となったんだ。僕らは元々カヴァーバンドから始まって、そこからオリジナル曲を作って『Ⅲ』というアルバムができた。そこからまたさらに進化を遂げて『Ⅳ』というアルバムができた。バンドをやっていく中で様々な影響を受けて僕たちが成長していったその進化の過程でしかないんだよね。

僕らはブラジルの音楽を始め世界各国の音楽を聴くし、日本で言えばYMOだったり、エレクトロニックミュージックからも影響を受けているんだ。それらを融合させて今回の作品が出来たと思う。それは作曲面だけでなく、プロのミュージシャンとしてソロやインプロヴィゼーションの技術っていうのも進化の中でより改善していこうと思っているよ。

__Leland Whittyさんの正規メンバーとしての加入がバンドに与えた影響があれば教えてください。

Hansen:Lelandは元々同じ大学だったから5年位前から知り合いだったんだ。サックスも上手いし他にも色々な楽器が演奏出来たから彼は有名人だったよ。友達になって仲良くなってから、一緒にジャムセッションをしたりビデオを作ったり、地元のライブハウスで演奏したりしていたんだ。

それで、Ghostface Killahとツアーを回る時にギタリストとサックス奏者が必要だったから、彼にツアーに参加してもらうことになって正式にメンバーとして加入することになった。彼のおかげでバンドに新たなビジョンや要素を加えてもらったと思うよ。彼はギターとサックスがメインなんだけど、フルートやシタールもできるんだ。

__Tyler, the CreatorやGhostface Killah、Kaytranada、Mick Jenkinsといった複数のアーティストとこれまでコラボレーションをされていますが、それらからどのようなインスピレーションを受けましたか?

Sowinski:まず作曲面でとても影響を受けたよ。例えばGhostface Killahはリリシストであるのに対して、Kaytranadaはビートメイカーだから作曲のプロセスが全く違ったんだ。Ghostface Killahの場合は先に僕たちが作った曲を彼に送って、彼のイメージやリリックに合っているかどうかをフィードバックしてもらってバンドに反映させるっていう作業だった。

一方でKaytranadaとは一緒にスタジオに入って作ることもあれば、僕たちが作った曲を彼がパソコンでプログラミングしたりアレンジを加えるっていう流れもあったね。ジャムセッションをしたりシンセサイザーを使ってみたり、彼が慣れていないようなアレンジを一緒にやってみることで、実験的で新しい領域にプッシュすることができたと思う。

__そのKaytranadaとの共作「Lavender」のMVが先日公開されましたが、まるでデスゲームのような世界を描いたこの映像作品のテーマはどのようなものですか?

Hansen:あのビデオのディレクションをしているのはFantavious Fritzっていう僕らの友達なんだ。「ダンジョンズ&ドラゴンズ」っていうアメリカのカードゲームがテーマになっているんだけど、その中に出てくるドラゴンマスターっていう役柄が現代で実際に存在したら面白いねっていう話をしていたんだよ。その話が盛り上がってこのビデオができたんだ。

最後に出てくる人がドラゴンマスターの役で出てきているんだけど、彼もJohnっていう僕らの友達なんだよ。で、その撮影をしている時にたまたまKaytranadaがトロントにいたから、彼をブルースクリーンの前に立たせて色々な動きをしてもらったんだ。

今も同じメンバーで「Chompy’s Paradise」って曲のMVを作っているところなんだけど、それはLelandが主演で、サックスの上に爆弾が仕掛けてあるっていうストーリーなんだよ。

__「Lavender」のMVと楽曲のテーマに何か関連性はありますか?

Hansen:正直、先にビデオを作って後からこのビデオに合う楽曲を選んだから、楽曲ありきの映像っていうわけではないんだよね(笑)。だから関連性みたいなのはないんだ。ただそこに解釈を加えるとすれば、あの楽曲はシリアスでダークなイメージだから、そこに対するパロディじゃないけれど、少しふざけているような面白いビデオにしたら良いんじゃないかっていうのはあるね。

__『Ⅳ』の収録曲である「Speaking Gently」は、ODDJOB(日本のクリエイティブ・スタジオ)によるアニメーションの映像となっていますが、その制作過程を教えてください。

Sowinski:マネージャーがRyan Hemsworthと知り合いで、彼にODDJOBの映像作品を観せてもらったんだ。その流れで「Speaking Gently」のMVをお願いすることになったんだよ。

__映像では、シリアスでダークなオープニングから始まって、情緒的な展開からドラマチックに終わっていましたが、それらは、バンドの表現として全体のテーマにも重なるものなのでしょうか?

Sowinski:そんなことは全く無いよ(笑)。BADBADNOTGOODっていう名前だってジョークみたいなものだし。僕たちは元々仲が良いし、おふざけっていうか、いつも学生ノリというか、まあこんな感じだからさ(笑)。バンドとしてはシリアスやダークっていうものからかけ離れているよ。みんなで馬鹿やったりダラダラしたり、そうやって楽しむのが大好きだし。

Hansen:あと付け加えたいのは、僕らは元々インストゥルメンタルの音楽をやっているから、表現の自由の幅が広いというか、割と好き勝手にやってきたんだよね。オリジナル曲を作るってなったときに何故かダークな雰囲気の音楽ができたんだよ。

ただ、最近の世界情勢や北アメリカの政治情勢だったり、行き先が不安でどこか皆が怒りや不安を抱えているっていうネガティブな雰囲気が現代にはあると思うんだ。そういった中で僕たちはネガティブな世界を明るくするような世界観でやっていきたいって思っているよ。今後も世界各国いろんな場所でライブをやっていろんな人と出会って、もっとポジティブなパワーを溜めたい。そうでないと、世界にあるネガティブな部分っていうものに立ち向かっていけないからね。

__ありがとうございます。最後に今後の活動についてお聞かせください。

Sowinski:今回のツアー中で、今日が16公演中の3回目なんだ。東南アジアとオーストラリアを回ってから、真冬の極寒の12月末にカナダに帰るよ。とにかくツアー中はよく飲んでよく食べてよく笑って色んな出会いがあってっていう、とても健康的なスタイルを保ちつつも、音楽も作れたら良いなと思っているね。

(2016.11.18 WWW Xにて)

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lV:
01. And That, Too.
02. Speaking Gently
03. Time Moves Slow (feat. Sam Herring)
04. Confessions Pt II (feat. Colin Stetson)
05. Lavender (feat. Kaytranada)
06. Chompy’s Paradise
07. IV
08. Hyssop of Love (feat. Mick Jenkins)
09. Structure No. 3
10. In Your Eyes (feat. Charlotte Day Wilson)
11. Cashmere
12. Up (Bonus track for Japan)

インタビュー・文:成瀬光
1994年生まれ。青山学院大学総合文化政策学部在籍、音楽藝術研究部に所属。

通訳:青木絵美