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INTERVIEWSNovember/24/2016
[Interview]yahyel – “FLESH AND BLOOD”(Part.1)
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 池貝峻、篠田ミル、杉本亘によるプロジェクト、yahyel(ヤイエル)。2015年3月に結成した彼らは、同年5月にBandcampでEP『Y』を発表後、今年1月にUKツアーを行い、2月にダブルA面の7インチ『Fool/Midnight Run』をリリースしている。同作は、国内のレコードショップだけではなく、ツアー時にインストアライブを行ったロンドン、ノッティンガムのRough Tradeや、パリのcoletteの店頭でも販売されたという。

 ドラムに大井一彌、VJに山田健人を加え、本格的なライブ活動を展開していった彼らは、着実に信頼と評価を獲得していき、アルバム未発表にして、今年7月に開催された「FUJI ROCK FESTIVAL ’16」のステージROOKIE A GO-GOに出演。直前には、シングル「Once」のリリースと共に、VJを担当する山田健人による同曲のミュージックビデオが公開されている。

 そして10月、デビューアルバムとなる『FLESH AND BLOOD』のリリースを発表。大友克洋、伊藤計劃、ジョージ・オーウェル、ウォシャウスキー姉妹などの諸作品にインスピレーションを受けたという本作で、彼らは人間の内面を浮き彫りにし、現実そのものの意味や存在について聴き手に問いかける。今回の作品、また”yahyel”というプロジェクトについて様々な謎を紐解くべく、本人たちにインタビューを行った。

__yahyel結成の経緯とコンセプトについてお伺いしたいと思います。

篠田:ヴォーカルの池貝とは大学からの友人なのですが、一緒に音楽をやってみようということで、一昨年の冬頃からトラックを作り始めたのがきっかけです。杉本とも別のバンドをやっている頃から知り合いで、もっと海外でやっていけるような音楽をやりたいねって話をしていて。それで、2人を引き合わせたら上手くいくんじゃないかと思って、2015年の2月くらいに3人で集まって3月からこのプロジェクトを正式に始めました。

その時に、海外でオンタイムなものを僕たちもやりたいっていうのを考えていて、池貝は元々ブルース寄りのシンガーでR&Bも歌えて、一方杉本はポスト・ダブステップ的なトラックを作ることを得意としていたので、この2つを掛け合わせたら現行のインディR&Bのようなことが出来るんじゃないかって思っていたんです。それで初めて3人で集まったその日に完成させた「Midnight Run」という曲が正にそれを体現していたので、この方向性でいくことになりました。

__“国境のない音楽集団”と呼ばれているのをメディアで目にしますが、元々そういった匿名性のイメージがあって結成されたというよりは、楽曲ありきでバンドのイメージが固まったのでしょうか?

杉本:そもそも“国境のない音楽集団”を目指しているというわけではないんですね。自分たちでは特に打ち出していないんですよ。

篠田:まず、日本向けに音楽を作る、海外向けに音楽を作るっていうのがそもそも変な話だと僕らは考えていて。良いものを作れば国境なんて関係ないじゃないかって、ぼんやりとした違和感を持っていたんですよね。だから“国境のない音楽集団”って呼ばれてると思うんですけど、それ自体がなんか変だねって話はいつもしてます。

杉本:人ってどうしてもそこの線引きをしたがるから、それ自体がもうおかしなことだよね、っていうのが全体のテーマとしてあるよね。

篠田: 「日本人離れした」っていう表現って、すごく卑屈な表現だなって思っていて。それを言われてしまったが故に、じゃあそれを逆手にとろうよっていうことで匿名性という言葉が出てきました。どこの誰がやっているのかよく分からない感じを出そうってなったのかな。

杉本:そこの部分に関しては、池貝の人種に対するコンプレックスみたいなものもあるのかも。

篠田:3人とも海外在住経験があるんですけど、その中で日本人に対するイメージとして感じるのは、「日本はグレイトだ」とか言ってくれるんですけど、その”グレイト”にあるのは、日本的なものに対するフェティシズム故のグレイトだっていう話で。要はこう、“オリエンタルで奇妙、それがクールだ”みたいな。でも日本人っていうフィルターをかけなくてもクールなものは沢山あるし、僕らはそれを表言したいとずっと思っていて。

海外に出て行ったアーティストを見ても、やっぱりオリエンタルなギミックを売りにしないと外に出て行けなかった。クールジャパン的なものをあえてギミックにしないと世界ではそれがクールなものとして受け取られない。でも僕たちはそういうことをしたくなかったので、そこから“匿名性”っていうものが引き出されたのかなって思いますね。そういう、フェティシズムの視線を疑って欲しいというか。

__ライブではVJの山田健人さんによってメンバーの身体に映像を投影し、その身体性をも伏せるようなパフォーマンスをなさっていると感じました。このパフォーマンスの意図を教えてください。

池貝:もちろん音楽だけで勝負したいっていうのもあるんですけど、その上で、身体性自体が意味を持ち過ぎていて、それを皮肉りたいんですよね。顔が見えていようと、どういった国籍や性別だとしても、音楽を聴く上でそれは大して意味がないというか。僕らが音楽を制作して何を表現したいかっていうプロセスの中で、全く大事なことではないので。今の音楽シーンはそこを打ち出さないといけないっていうことを皮肉りたいんですよね。それ自体も僕らの表現の1つというか。

篠田:バンドなりアーティストなりを見る時に、何故か「このバンドのこのヴォーカルはこういう見た目でこういうキャラを持っているから」っていうタグ付けみたいなことに目が行き過ぎている気がします。そこ自体おかしいんじゃないかっていうことを考えて欲しいっていう意味もあって、ぼやかすというか、わざとよく分からないような表現の仕方をとっています。

池貝:例えば僕らが国外に行ってライブしたときに、僕らが日本人男性で、日本にはこういうイメージがあってっていうステレオタイプ自体は国内でのそれと違う意味を持っていると思うんですけど、どちらも大きな意味を持ち過ぎているんですよね。国内国外に留まらず、全ての人に対してステレオタイプが意味を持ち過ぎているっていうことを一旦否定したいんです。

取材・文: 成瀬光
1994年生まれ。UNCANNY編集部員。青山学院大学総合文化政策学部在籍、音楽藝術研究部に所属。