INTERVIEWSNovember/29/2016

[Interview]yahyel – “FLESH AND BLOOD”(Part.2)

__ありがとうございます。では、次に『FLESH AND BLOOD』のタイトルの由来と作品の具体的なコンセプトなどお聞かせください。

池貝:タイトルは“血肉”っていう意味です。多分一言に集約すると、「人が血肉でできた人間であるが故に起きていることだけを表現しているアルバム」だと思うんですよ。個人と個人の関係性が時間によって変わっていってしまうこととか、それと世界の対比とか。人は思っているより無関心であるってことかな。色んな人がそれぞれの人生を生きていて、色々なものが離れていったりくっついたりするみたいな。

僕らは人間で、世界のことをずっと意識してられるようなキャパシティはないし、今目の前に居る人が何を考えてるのかっていうことすら分からない、そんな事実が色んなことを動かしていて。それって別に嬉しいことだけじゃないと思いますし。そんな主観的なリアリティがアルバムを通して大事にされていると思います。その中で曲それぞれにテーマがありますね。

さっき出てきたディストピアみたいなことも、社会とかのスケールの話で盛り込まれていますし、人種の問題もそうですし、個人の問題もそうですね。

__トラックは池貝さんが中心となって作っているんですか?

池貝:僕が中心になって作っているっていう意識はあんまりないです。作詞とかに関しては全部僕がやっているので、世界観っていう部分では僕が担っているんですけど。基本的に僕が最初にデモを作って、それを2人に投げて、それを音楽として拡張していく作業は皆でやっています。

__楽曲についていくつかお伺いします。「Kill Me」というトラックでアルバムが始まるっていうのがまず気になったのですが、この曲はどういった曲でしょうか。

篠田:まずトラックの話で言うと、フジロックでコードとシンセサイザーの音はかなり練ったよね。

杉本: うん。最初はガイ君がデモを持ってきて、それで形を整えたんだよね。

篠田:それで一旦大枠みたいなのが出来たんですけど、それをいざ池貝に戻してみると、サビのコードと、歌のメロと歌っている雰囲気がいまいち合致しないぞってことになって。

杉本:Aメロとサビのコード進行がもう1番の時点で転調していて。でも何故かそれがしっくり聞こえてくるから、なんか高等なことやってるなと思って。それはそれでトラックとして格好良いなと思ってやっていたんだけど、いざヴォーカル乗せたら合わない気がするってことでちょっと揉めて。

池貝:あれさ、俺が投げた時点でもう転調してたよね。そう、自分が転調させておきながら、綺麗になった曲にヴォーカル乗せたら合わないってなって(笑)。どうにかしようって冷凍保存してたんだよね。で、フジロックに出た時に、もう曲作らないと駄目だって言ってライブの後に曲作り始めて。

杉本:締め切りとかもあったんだよね。

篠田:そう、プリンスホテルのロビーでね。

杉本:せっかくフジロックに来て満喫したい中、朝からロビーで作業してね。

池貝:Red Hod Chili Peppersを求めて人々が流れていくのを見ながらね、僕らはパソコン1台を3人で囲んで曲を作るっていう。そんな感じで作った曲です(笑)。これはやっぱりアルバムのオープニングとしての意味合いが強くて。まず「殺してくれ」っていうタイトルから入ること自体のインパクトの強さもありますし、そういう感情を一発目に持ってくるっていうのは勇気がいるけど、僕らとしてはそれを表現したかったっていうのもあります。

曲の中で僕が言ってることって多分、周りの人が変わっていってしまうことに対しての疑問なんですよね。曲のサビの1番大事な部分の歌詞って、せっかく自分達が良い時間を過ごせるチームみたいなものを持っていたのに、なんとなくの感覚の中で崩れていってしまっているなら、自分達が磨いていた弾で自分達を殺してくれっていうのがキラーフレーズになっていて。変わっていってしまうなら、比喩表現としてだけど、もういっそここで自分を殺してくれ、僕はここで留まりたいっていうのを言っている曲なんです。前に進もう、みたいなことをまず否定している曲だと思いますし、瞬間瞬間をちゃんと描写しつつ殺してくれっていう……。僕らはこういう方向性でいきますよ、こういう表現をしたいですっていうのが凝縮されている曲だと思います。

篠田: 「Kill Me」ってタイトルの割には耳心地の良い曲だしね。皮肉だけど。

取材・文: 成瀬光
1994年生まれ。UNCANNY編集部員。青山学院大学総合文化政策学部在籍、音楽藝術研究部に所属。