INTERVIEWSNovember/18/2016

[Interview]LASTorder & Utae – “Cherish”

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 LASTorderがおよそ2年ぶり、3作目となるスタジオ・アルバム『Cherish』を完成させた。本作で、LASTorderは、エレクトロニカの様式を軸にしながらも、幼少から学んだというクラシックから、J−POPといった日本独自のカルチャーの要素までを絶妙な均衡でミックスさせることにより、最終的に他に見ないオリジナルのスタイルへと昇華することに成功している。

 今回、本作『Cherish』を中心としたインタビューに加え、収録曲「Clockwork」について、LASTorderとコラボレーターのUtaeの両者に詳細を伺った。

__ご自身の音楽的なルーツはどのようなものですか?

LASTorder(以下、LO):小さい頃からポップなものにゆかりがあったので、その軸がブレないまま今まで来ています。だから、いつも作っているときにそんなに意識している訳じゃないんですけど、みんなが聴きやすいような音に自然になっていくのかなと思っています。完全なルーツっていうわけじゃないんですけど。

__現行のUSやUK、ヨーロッパのサウンドとの違いは意識していますか?

LO:違いっていうかあんまり追ってないので。あんまり今っぽいサウンドとかには自然となってないんじゃないかなっていう自覚はあります。意識は全くしてないですね。

__「Cherish」は、「大事にする」とか「胸に秘める」という意味だと思いますが、それをアルバムタイトルにした理由を教えてください。

LO:ずっと聴き続けてほしいなっていう感じももちろんあるんですけど、何となく自分の中の曲のイメージとこのアルファベットの羅列のイメージ、超感覚的で申し訳ないんですけど、”Cherish”っていうのが、聞こえがいいというか、カワイイ感じじゃないですか。だからそれこそ、いろんな人に聴きやすいじゃないけど、食べやすいものですよ、みたいな感じも込めて。

__前作との違いはどのようなところですか?

LO:なんかこう、一言で言えば、成長したと思います(笑)。前のアルバムまでは、作った後にまとめてって感じだったので。今回は最初からひとつの作品にまとめようっていう意識で制作していきました。

__今回のアルバムの制作を始めたのはいつ頃からですか?

LO:前作(『Allure』)が出た年(2014年)の10月、11月くらいからですが、はっきり意識し始めたのは2015年からです。

__「神様」は2014年の9月にSoundCloudで公開されていますね?

LO:この曲はどちらかというと前作の延長みたいな感じですね。SoundCloudにアップしたヴァージョンは、素材を前作の中の「Temporary Sympathy」でPianaさんが歌ってくれている声の素材を使っていたんです。エディットを変えて、声の素材とかも別のものにして、コンパクトに仕上げたところ、(アルバムに)ハマりそうだなって思ったんで、最初に作ってはいたんですけど、いちばん最後にアルバムに入れることを決めました。

__どのくらいのストックから13曲を選んだのですか?

LO:そうですね、でもプラス3曲、4曲くらいです。誰にも聴かせてもいないようなボツのトラックもありますけど、完成させたものは16、7曲くらいで。その中からもっと厳選してもいいかなとも思ったんですけど、13曲になりました。

__アルバムのメインはどの曲になりますか?

LO:やっぱり「Painter’s Novel」と「Clockwork」ですね。「Painter’s Novel」はMVも作っています。自分で自分の曲を好きになることはあんまりないんですけど、歌モノとか、フィーチャリングしているものとかは好きなんですよね。なんか他人の要素が入っていると自分でも好きになります。

「Painter’s Novel」で言えば、柳本奈都子さんの歌が、最初お願いした時とはちょっとイメージが違うかもっていうのが一回返ってきたんですけど、それがすごい自分の中でいい裏切りで。この曲ちょっとこぶし利いているっていうか。エレクトロニカの歌って、スーッと歌うようなイメージが強いじゃないですか。そういうところから逸脱していて気持ちいいなっていうところはありました。

__では、「Clockwork」でUtaeさんと共演していますが、どのような経緯でコラボレーションが決定したのでしょうか?

LO:最初は、ライブ会場で会ったのがきっかけです。

Utae:今年の4月に、fraqseaさんのリリースパーティに出演したときに、(LASTorderが)会場に来てて、「LASTorderがいる!」みたいな感じで、共通の知り合いがいたので喋って。

LO:歌も歌われるって聞いたんで、声をかけました。年齢とかも割と近いのがあって、そういうので、こうなんか一緒にやろうってなるじゃないですか。それで、ほんとに歌ってもらったらすごいいい感じで。曲を作っておいて渡して、歌詞をUtaeさんに書いてもらったんです。子供に聴かせるみたいな、子守歌みたいなイメージじゃないけど、優しい感じでお願いしますっていう風に歌詞をお願いして、声も本当に優しい感じで。普段はあんまりこういう感じで歌われないんですよね? なので、さっきの柳本さんの曲みたいに、自分の曲でUtaeさんの優しい部分みたいなのが出ているので、すごく気に入っているトラックです。

Utae:なんか優しい歌詞って全然書いたことがなかったので、すごく難しくて。1か月以上待ってもらっちゃって。くーっていっぱい考えた末、夜中に優しさを書きました。

__歌詞に平仮名が多いですが、意識したのですか?

Utae:そうですね。漢字ってちっちゃい子って読まないので。やわらかいイメージでなるべく少なくしました。

__完成してみていかがでしたか?

Utae:自分のない部分を引き出してもらえた感じがして。すごいいっぱい聴いてほしいです。

LO:この曲だけテクスチャー的に完全にポップスで。他は一応エレクトロニカとしての要素を入れているつもりなんですけど、この「Clockwork」って曲だけは、そういうものが全くない。純度が高いので、歌詞のピュアな感じとかも生きたんじゃないかなって思います。

__Utaeさんから見たLASTorderさんはどのような印象でしたか?

Utae:私と真逆ですごいしっかりして、ちゃんとしてるなって印象でした。はぁーってならずに、落ち着いてるなーって。落ち着きがある。

__LASTorderさんから見たUtaeさんの印象は?

LO:何となく、一緒にやったらいい化学反応が起きそうだな、みたいな。何かそういう雰囲気はありましたね。印象で言ったら全然あんま取り繕っていない感じで、僕もいまだにちょっと不思議な人だと思っていて(笑)。でも、掴めないけど意外と、それこそ音楽の話とかでは盛り上がんなかった(笑)。普通にテレビの話とかで盛り上がりました(笑)。

__今後、お二人が共演するような、リリースパーティーなどの予定はありますか?

LO:今のところはないですけど、それはもちろんやりたいですし、さらにまた歌ってもらいたいなとか、やっぱそっちを考えちゃいますね。

__次の活動やリリースの予定は決まっていますか?

LO:それがないんですよ(笑)。The Wedding Mistakesの活動もあるんですけど、それも具体的な予定がないというか。むしろアルバムを作り終えてもDTMには毎日のように向かっているので、また絶対何か動きたいなっていうのは思っています。

(2016.11.4、東京・青山にて)

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Cherish:
01. Cherish
02. Milk
03. Rubble & Oxygen
04. Painter’s Novel feat. 柳本奈都子
05. Discal Smoke
06. Lilac
07. Embracing
08. 神様
09. Terminal
10. Winter Song
11. Hidden Era
12. Clockwork feat. Utae
13. きみにPlanet

インタビュー・文:T_L

アシスタント: 岡田桃佳
1995年生まれ。主にポップスを中心とした洋楽を得意とする。青山学院大学総合文化政策学部在籍。