EVENT REPORTSOctober/19/2016
[Live Report]HyperJuice – “HYPE ME vol.1”
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 9月25日のデイタイム、fazerockとharaにより結成されたサウンドチーム・HyperJuiceによるライブ型クラブイベント「HYPE ME vol.1」がCircus Tokyoにて開催された。今回のイベントは、HyperJuiceとHabanero Posseにより制作された楽曲「Fiyahhhh (feat. J-REXXX)」のリリースイベントも兼ねており、同楽曲を共に制作したHabanero Posse、J-REXXX、そして昨年リリースされたHyperJuiceのEP『Lights』にも参加したJinmenusagiも出演した。

 また、クラブ従来のイベントとしてではなく、複数のアーティストが「対バン方式」で出演するライブイベントに近い形で演出がなされていた。それだけでも、イベントそのものの臨場感が強くなったように感じ、まさにここに、様々なサウンドやスタンスを吸収し、自分たちの形で放出しようとするHyperJuiceのミクスチャー的な精神が現れているように感じられた。

 ライブイベントとクラブイベントのミックスを強く意識しているのは、そういった演出だけでなく、アーティスト達のスタイルもそうだ。一番最初のアクトを務めたラッパーのJinmenusagiは、JukeやGrimeといった、数々のベースミュージックに強く影響を受けたMixtape『恐怖』をフリーリリースしており、イベントの直前にはDubbyMapleとの楽曲「はやい」のMVをYouTube上にて公開している。様々なジャンルとメディアを飛び越える軽やかさと飄々としたステージング、そしてそのイメージに反して飛び出す力強いリリックとMCに観客は魅了された。ライブイベントとしては当たり前の事だが、MCとしての立ち振舞、ライブにおけるステージングによりのめり込めるのも、クラブイベントとしてはあまり多いことではなく、「HYPE ME」のコンセプトを改めて実感する事となった。

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 Jinmenusagiのライブの後は(今回のイベントではアーティストごとに転換タイムが設けられており、HyperJuiceのharaによる選曲のMIXが会場に流れる仕組みとなっていた。これもライブ感を醸造するための小粋な演出だった)、Habanero Posseによる1時間のDJセットが繰り広げられた。低速なレゲトンからスタートし、徐々に会場の空気を温めていくスタイルは、さながら手練のDJユニットとも言えるような堅実さだったが、時間が半分ほど過ぎると、徐々にテンポを上げていくと同時に、「ランバダ」の印象的なメロディをフックに、様々なカヴァー・バージョンのランバダが立て続けにプレイされるという、DJの大喜利的な側面にフォーカスを当てたようなプレイが行われ、最後にはHabanero PosseのBingoがギターに持ち替え、そのメロディをかき鳴らし、会場は熱狂に包まれた。

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 会場の熱気が上がっていく中、J-REXXXがステージに乱入し、なだれ込む形でライブがスタートした。J-REXXXも、レゲエMCでありながら、そのジャンルの垣根を超えるかのようなパフォーマンスと楽曲を携えるアーティストだ。目にも止まらない速さの「早口」を武器に、1曲目からフロアに自ら飛び込み、来客を煽っていくパンクスタイルでライブを披露。わずか20分という持ち時間で、フロアの熱量を一気に高めていった。

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 そして、イベントの最後を飾るのは、このイベントのホストであるHyperJuiceによる1時間のLiveSetだ。この1年間、彼らはDJsetとは異なる、よりアグレッシヴな体験を生み出す為のライブセットを積極的に行っており、今回はその一つの集大成であり、同時に彼らのこれからの活動のための実験でもあった、という風に感じた。fazerockは、ドラムサンプラーだけではなく、ベース、キーボードを交互に持ち替え、haraはDJとしてテクニカルなプレイやMCを行いフロアのボルテージを高めていく。彼らは、Bass Music、Grime、またはEDM、J-Popなども飛び越えた、「HyperJuice」らしいサウンドを展開していくと同時に、ライブのアグレッシヴなステージングやMCからも窺えるように、フロアの熱気を爆発させていくための緻密な計算も欠かさない。

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 ライブ序盤では、過去にリリースされたダンスチューン「TRAPPIN RIDDIM」のライブ・ヴァージョン等を演奏し、やや早めのテンポの楽曲でフロアを加速させていった。ライブ中盤にはJinmenusagiが客演として再登場し、「BADMAN DRUMZ」や、先日SoundCloudにて公開された「City Lights (BUGLOUD Remix)」をプレイ、huezによる強力なレーザー演出も相まって、フロアが一度目のピークを迎えた。その後は、一気にムードを切り替え、同じくJinmenusagiがフィーチャーされた「G.I.R.L.」を演奏。勢いだけではない、様々なスタンスをミックスしたHyperJuiceの真骨頂が覗えた。

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 その後も、HyperJuiceは更に勢いを増して様々な楽曲をドロップしていった。特に驚かされたのは、彼らが現在制作している新曲だ。プレイされたのは、ストレートに観客の心を鷲掴みにするようなハイスピードなメロコア。以前より10-FEETの「River」等をAmenPunkとしてエディットしてDJセットに組み込んでいたHyperJuiceだったが、この楽曲で彼らのミクスチャー精神がより強固なものとして表れたように感じた。この楽曲は更にアレンジを強化し、次のリリースとして用意されることが予測されるので、是非とも期待したい。最後には、J-REXXX、Habanero Posseが登場し、ライブ・ヴァージョンの「Fiyahhhh」を披露。1時間を全力で駆け抜け、イベントが終了した。

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 ライブイベントのシステムでクラブサウンドを提供するという「HYPE ME」の試みは、イベントとしての満足感だけでなく、音楽イベントというものがどうあるべきなのか、という事についても考えさせてくれた。国内でも、EDM、そしてダンス・ミュージックのフェスティバルの流行に並行して、そういった現場に登場するDJや、エレクトロニックアーティストが徐々に増えている。それに応じて、都内で開催されるクラブイベントも、従来のような「一晩を音楽で繋いでいく」というもののみではなく、アーティストが主体となる「フェス型イベント」が徐々に増えていて、クラブ・ミュージックとの付き合い方が人によって大きく変化する時代へと突入している。その中で、フェス的な楽しみ方を対バン方式のライブイベントへと変換した「HYPE ME vol.1」は、観客の音楽の楽しみ方にフォーカスを当てたイベントだったと同時に、アーティストにとっても今後のパフォーマンスや、音楽をいかに発信していくかについての手がかりになるものだったのではないだろうか。

 「今年の夏はフェスに出場出来なかった」とharaがMCする場面もあったが、来年以降、その現場に最も相応しくなるのは彼らなのではないかと感じている。HyperJuiceの今後の活動と同時に、また「HYPE ME vol.2」以降が開催されることを、心から期待したい。

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取材・文: 和田瑞生
1992年生まれ。UNCANNY編集部員。ネットレーベル中心のカルチャーの中で育ち、自身でも楽曲制作/DJ活動を行なっている。青山学院大学総合文化政策学部卒。

Photo by Taisuke Y.