16052301
ARTIST:
Domo Genesis
TITLE:
Genesis
RELEASE DATE:
2016/3/25
LABEL:
Odd Future
FIND IT AT:
Amazon
REVIEWSMay/23/2016
[Review] Domo Genesis | Genesis

 OFWGKTA のメンバー、Domo Genesisによる初のスタジオ・アルバム『Genesis』。本作は、過去の作品に見られたようなベースの強いトラップの様な重みは感じられず、またOFWGKTAでの活動とも異質な印象を受ける。むしろ、近年流行しているバンドサウンドのネオソウル、インディ・R&Bを思わせるような仕上がりとなっている。もとより、Domo自身が幼少期にはヒップホップよりもDramaticsやTemptationsといったソウルミュージックを聞いて育ったと語っているように(*1)、このこと自体は不思議なことではない。しかし、Tyler, the Creatorとの共作『Rolling Papers』(2010)やThe Alchemistとの共作『No Idols』(2012)といったミックステープ、Hodgy Beats、Left Brainとの3者によるMellow Highとしての活動と本作との間の振れ幅は非常に大きい。

 唯一、過去の作品の面影を感じる曲を挙げるとすれば、「Go (Gas)」だろう。この曲ではWiz Khalifa、Juicy J、そしてTyler, the Creatorといった面子とタッグを組んでいる。打楽器で刻まれるビートに単音フレーズのループ、どこか神聖な雰囲気もありながら不穏な緊張感のあるフック。実際この曲は、OFWGKTA の首領、Tyler, the Creatorがプロデュースを手がけている。ただ、過去作品を思わせる攻撃的な楽曲はこれだけだ。

 本作でDomoは、自ら表に出て自分の主張を叫ぶよりも、ゲストとのコラボレーションによって生まれる音楽そのものを楽しんでいる様だ。例えば、Chance the Rapperなどのプロデュースを務めるCam O’biがゲスト参加した「Faded In The Moment」では、スロウでグルーヴのあるビートに、優しいコーラスのハミングとメロディ、Domoの少し気怠いラップが緩やかに乗る。少し掠れた声で歌うフックも含めて甘い雰囲気の漂うネオソウルのような楽曲に仕上がっている。リリックも攻撃的な部分は一切なく、自身の内情を歌うものとなっている。

 「My Own」では、インディ・R&Bやブルー・アイド・ソウルのシンガー/プロデューサーとして知られるJMSNと共作している。JMSNの甘い声で歌われるフックが主、Domoのラップが従といった構成となっており、より一層インディ・R&Bの要素が強い楽曲だ。また、本作のリード曲にもなった、Anderson .Paakとの共演曲「Dapper」は、ラフなダンスビートを刻むドラムにシンセサイザーが洒落た印象を与え、ディスコ程泥臭くなく、しかしそれに似た身体が動く心地良さがある。また、公開されたMVでは、ミラーボールやネオンの飾りがキラキラと輝き、ピンクの光に照らされる体育館でDomo GenesisとAnderson .Paak、そしてTyler, the Creatorが踊り、ローラースケートで(わざとらしい程に)“楽しんでいる”。

 Domoが所属するOFWGKTA(Odd Future Wolf Gang Kill Them All)は、”オルタナティブ・ヒップホップ・コレクティヴ”として認知されている。中心人物であり、OFWGKTAのほとんどの楽曲のプロデュースも手がけるリーダー、Tyler, the Creatorの歯に衣着せぬ発言、破天荒なキャラクター、そのカリスマ性がOFWGKTAを象徴している(彼のセカンドアルバム『Goblin』(2011)収録の「Yonkers」のMVでのパフォーマンスが物議を醸すものであったことは記憶に新しい)。〈Odd Future Records〉からは、Frank Ocean、Mellow Hype、The Internetなどの作品がリリースされており、OFWGKTAは、他にもスケーター、写真家、イラストレーター、俳優など、多くの若手クリエイターを抱えている。彼らは、媚びることなく、常に中指を立て、自分たちがやりたいことをやりたいように行い、好きなように”遊んでいる”。そのような若い彼らのリアルな感情表現とカルチャーへの向き合い方は、大きな共感を呼んできた。一方で、Domo Genesisの本作にもまた、OFWGKTA同様の自由奔放な表現を想定していたが、収録された曲を聴くと、それらは曖昧なものになっている。

 彼にとって音楽は、何らかの叫びや訴えを伝えるものより、それ自体が娯しみそのものであるようだ。収録曲から感じる音の心地よさからもその意思が窺える。従来のOFWGKTAらしさを求める聴き手には少々不十分かもしれないが、一方で本作には、Domo Genesisのルーツ、音楽性、志向が色濃く表現されている。正に、自身の名の一部をタイトルとした本作『Genesis』には、彼なりの”Awkward Groove(”いなたい”グルーヴ)”が揃っているのだ。

(*1)…hnhh “Domo Genesis Discusses His Debut Album And What He Learned From Odd Future” http://www.hotnewhiphop.com/domo-genesis-discusses-his-debut-album-and-what-he-learned-from-odd-future-new-video.37182.html

文: 成瀬光
1994年生まれ。UNCANNY編集部員。青山学院大学総合文化政策学部在籍、音楽藝術研究部に所属。