EVENT REPORTSDecember/16/2012

【Live Report】 Two Door Cinema Club / Citizens! – 12月15日 at Studio Coast

  9月に発売されたニュー・アルバム『Beacon』をひっさげて大阪、横浜を回り、各地のオーディエンスを熱狂させてきたこのツアーも、今回の新木場スタジオコースト公演が日本での最後のパフォーマンスとなる。この公演はオープニングアクトとして、トゥー・ドア・シネマ・クラブ(以下TDCC) も所属するレーベル、<Kitsuné>がプッシュする新人バンドであるシチズンズ!の出演もアナウンスされており、キツネファンにはたまらない組み合わせということもあってチケットはソールドアウトとなっていた。

 オープニングアクトを務めたシチズンズ!が始まる頃にはすでに会場はすし詰め状態となっていた。観衆の期待の高さが伺える。演奏が始まると、会場は一気に盛り上がりを見せる。オープニングアクトということで、およそ30分のステージであったが、デビュー作をフランツ・フェルディナンドのフロントマンであるアレックス・カプラノスが全面プロデュースしたということもあり、全体的に誰もが踊れるリズムとキャッチーなメロディでありながらも、じわじわと盛り上げていくような絶妙な塩梅の楽曲が多く、海外の新人バンドにありがちな曲に演奏が追いついていないということもなく地に足のついた演奏をしていたのが印象的だった。

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 また、ボーカルであるトムの大人びたロートーンボイスやクネクネとした動き、チープなシンセサイザーはジョイ・ディヴィジョンの影響も感じさせ、全体的におしゃれな見た目とは裏腹に、いい意味で硬派な音楽性を感じた。特に「カニエ・ウェストがアーケイド・ファイアをプロデュースしたら?」というテーマで制作されたという彼らの代表曲「True Romance」では、(その試みが成功しているかということは置いておいて)そのような彼らの音楽性が最も顕著に表れていた。

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 TDCCの日本公演はこの公演が最後になってしまうが、シチズンズ!は12月16日(日)に渋谷 SOUND MUSEUM VISIONで開催される<KITSUNÉ CLUB NIGHT>への出演が決定している。この公演を見て興味を持った人(チケットの半券を見せるとディスカウント得点有り)や、ソードアウトでチケットが買えなかった人なども、まだ、彼らの勢いを体感することが可能だ。

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 シチズンズ!がかなりの盛り上がりであったため、TDCCはサウンドチェックの時から歓声が飛び交い、彼らの登場が待ちきれないという雰囲気に包まれていた。スタジオコーストという大きな会場をソードアウトさせたということからもわかるように、彼らが数ある海外のアーティストの中でもトップクラスの注目を集めているのは間違いないだろう。

 準備が完了し会場が暗転すると地鳴りのような歓声が起き、「Sleep Alone」からライブはスタートした。その後もイントロが鳴り始めた途端に大きな歓声が起きたり、曲が始まって合唱が起きたりと、キャリアがそれほど長くないにも関わらず、すでに彼らの曲は、ライブという現場で大きく育っている。

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 TDCCはいわゆる踊れるロックバンドという括りで紹介されることが多く、実際に四つ打ちのドラムが曲を引っ張っていくことが多いのだが、ライブを見て感じたのは彼らの本当の魅力はそのような踊れる要素ではなく「歌」にあるということである。2000年代以降、星の数ほど踊れるロックバンドが登場しては消えていったが、彼らが100万枚ものセールスをあげて、これだけ大きな人気を集めている理由はそこにあるのではないだろうか。多くのメディアはキツネ出身というだけで「踊れる」という部分に着目しがちだが、彼らの本質は曲のメロディやボーカルであるアレックスの「歌」にある。それがライブというごまかしのきかない場面で十分に発揮された、圧巻のステージであった。

取材・文: 豊田諭志
1990年生まれ、大阪出身。UNCANNY編集部員。青山学院大学音楽芸術研究部の現部長。

Photo: Yosuke Torii


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