INTERVIEWSJanuary/19/2016
[Interview]Daughter – “Not To Disappear”
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 Daughterは、Elena Tonra、Igor Haefeli、Remi Aguilellaによって2010年にロンドンで結成された。2011年に自主EP『His Young Heart』、『The Wild Youth』を発表し、2013年3月には英レーベル〈4AD〉からファーストアルバム『If You Leave』をリリースしている。そして今年1月、およそ3年ぶりとなるセカンドアルバム『Not To Disappear』をリリースした。

 今作は、サウンド・プロデューサーに、DeerhunterやAnimal Collectiveを手がけたNicolas Vernhesを迎え、「Doing The Right Thing」「Numbers」「How」のミュージックビデオは、作家のStuart Eversがそれぞれの曲にインスパイアされ書いたショートストーリーをもとに、Iain ForsythとJane Pollardによって制作されたという。また、今作のアートワークにはイギリス、プライトンを拠点に活動する画家、Sara Shawの作品が使用されている。

 これらの映像作品やアートワークは、今作とどのような関わりを持っているのか。アルバムのタイトル『Not To Disappear』に込められた意味は何なのか。昨年11月に行われたHostess Club Weekenderでの来日公演を終え、前作から約3年ぶりとなる新作のリリースを目前に控えた彼らに取材を試みた。

__先日行われたHostess Club Weekenderでのライブはいかがでしたか?

E(エレナ・トンラ):とても良いショーでした。新曲も何曲かプレイしたけど、ちょっと緊張もしていて。あとテクニカル上の問題でペダルが壊れちゃったりしたんだけど、観客のみなさんの反応もとても良くて。温かく迎え入れてくれたし、音にもちゃんと耳を傾けてくれていたのですごく楽しめました。

R(レミ・アギレラ):地球の裏側にある日本に来てるわけだけど、みなさんが他の国の人と同じように盛り上がってくれたのですごく心地よく演奏できました。

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Photo by Kazumichi Kokei

 

__来年1月(取材時)にリリース予定の『Not To Disappear』についてですが、アルバムタイトルに込められた意味を教えてください。

E:”Not To Disappear”ってなんかこうものすごく強いメッセージだけれど、ロックンロールバンドとかのああいう強さではなくて。ちょっとデリケートな部分と、その中にある葛藤だったりとか強さが表現されていて。例えばこのアルバムの歌詞っていうのはちょっと孤独だったり、そういうフィーリングに関するものが多いんですね。なので、そういうか弱さの中でも消えないっていうか、そういう微妙な部分を表したかったんです。いつもアルバムのタイトルは歌詞から選ぶようにしているので、このアルバムの歌詞とか音に関することをまとめて表現できるような言葉を探して。それはいつも大変なんですけど、それでこの言葉がいいんじゃないか、ということで”Not To Disappear”をタイトルにしました。

__今作はDeerhunterやAnimal Collectiveを手がけたNicolas Vernhes(ニコラス・ヴァーネス)と制作されたそうですが、彼との作業はどうでしたか?

E:すごく良かったです。前回のアルバムではプロデューサーがいなかったのですが、今回はプロデューサーを迎えるということでレコーディング自体が全然違う雰囲気で。ずっとロンドンでいろんな場所を使ってレコーディングやデモ制作を1年間ぐらいしてたんですけど、ニューヨークのニコラスのスタジオで2ヶ月半ずっと同じ空間でやるっていうことがまず自分たちにとって新鮮で楽しかったし、10〜12時間くらいずっと同じ人たちとこもりっきりということもあって緊張感やストレスとかもあったけど、やっぱり全般的にはすごくハッピーな雰囲気があって、それを楽しむことができました。

__今作を完成させてみて、前作と異なっていると思うところはどんなところですか?

I(イゴール・ヒーフェリ):それは本当に難しい質問で、同じなんだけど違いがあるっていう。まるで「3年前の自分ってどうだった?」って聞かれてるのと同じ感じで。同じ自分なんだけどでもやっぱり3年経ってるので何か違うっていう、そういう感じなんですね。だから、サウンドとかプロセス、伝えていることは違うんだけど、同時に自分たちにとってはすごく自然な進化なのであまり大きな違いっていうものは感じないんです。でも前よりもうちょっと気持ち良く演奏できるようになったんじゃないかなっていうのはあります。

E:一番の違いは自信がついたということだと思います。他のバンドに比べると自分たちはあんまり自信が持てていなかった方のバンドだったと思うけど、今はファーストアルバムもセカンドアルバムも作ったし、自分たちが好きなサウンドっていうものを作って、それをレコードにすることができたっていう自信を持てているのが一番の違いですね。

R:2012年のときの自分たちが反映されたのがファーストアルバムだと思うし、2014年から2015年の自分たちがそのまま反映されたのが今回のアルバムだと思うので、あえて自分たちで特に何か大きく変化をつけようとしたわけではなくて。自然な進化でこういう作品が出来上がりました。

__Daughterの歌詞は内向的な感情を元にして書かれたような印象を受けます。歌詞はどのような環境で書かれているのでしょう?

E:時と場合によるけど、基本ひとりで書くことが多くて、あと暗闇で書くことが多いんですけど、それも意識していることではなくて。いつも自分のやり方として、さあ歌詞を書こうっていって書き始めるわけではなくて、自然に書きたいときに書くっていうのが多いのでアイデアがどこから来るっていうのは特に決まってはいないですね。でも確かにおっしゃった通りで、歌詞はすごくパーソナルなもので、本当に自分の内側から来ているものっていうのはあります。

__楽曲制作をする際、歌詞と楽曲のバランスをどのように捉えていますか?

I:音と歌詞でコントラストがあるっていうのがいいと思うんです。なので、歌詞がさっき言ったようなパーソナルなちょっと暗い内容だったとしても、それをこう明るくポジティブに美しくできるのが音だと思うんですね。だからそういう音の役割というものをみんなで話し合ったりとか、この歌詞に対してこの音は何ができるかっていうのを考えてみんなで曲を作ったりとかもします。

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Photo by Kazumichi Kokei

 

__今作のアートワークはイギリス、ブライトンを拠点に活動するアーティスト、Sarah Shawによる油絵を使用されているそうですが、なぜこの作品を選んだのでしょう?

I:だってすごく美しいから! これは僕のアイデアで。もちろんこの絵が自分たちのアルバムの内容やストーリーを全部映し出しているわけではないんだけど、例えばこのアートワークもダークで暗いんだけどもそこから何かポジティブで違うものを感じ取れたりだとか、そのフィーリングっていうものが共通していると思うんです。僕の彼女がアートギャラリーで働いていて、彼女を通してSaraを知ったんだけど、それで彼女の作品をとても気に入って。アルバムを作っていたときからビジュアルのイメージっていうのをずっと考えていて、出来上がってからこのサウンドを表現するのに何がいいかっていうのを考えたときにこのアートワークだと思ったんです。それで、Saraに連絡を取ったとき、実は彼女も自分たちの音楽を気に入ってくれていて、自分たちの音楽からインスピレーションを受けていたそうなので、互いにインスパイアされていたっていうのもいいなと思って彼女の作品を選びました。

__ミュージックビデオはStuart Evers(スチュアート・エヴァース)による3つのショートストーリーに基づいてIain Forsyth(イアン・フォーサイス)とJane Pollard(ジェーン・ポラード)が制作したということですが、このコラボレーションのいきさつについて教えてください。

R:今回のアルバムに関しては、ビデオだったりイメージだったりそういったものを意識したかったんです。映像に関しては、ファーストアルバムのときに一緒にやったイアンとジェーンがすごく良かったので今回も彼らとまた作業をするってことは決めていました。エレナが歌詞や曲をイアンとジェーンに送ったら、彼らがそれを友達のショートストーリーライターであるスチュアートに送って、彼がその歌詞をベースにショートストーリーを書いて、それをまたイアンとジェーンに戻して、イアンとジェーンがまたそのショートストーリーを映像で表現したっていう、良いクリエイティビティのサークルができていて。それと、3〜4日かけて同じ場所で撮影されているんですけど、そのことによってビデオ自体に繋がりを持たせることもできたと思います。

__そのことによって楽曲にどのような新たな解釈が与えられたと思いますか?

E:ビデオごとに違うんですけど、「Doing The Right Thing」は曲のイメージとよく繋がっていると思うし、「Numbers」に関しては、歌詞の内容をミュージックビデオに出てくるキャラクターが体現化しているような感じがして、とても気に入っています。「How」のビデオは、アルバムがリリースされる頃に公開される予定なんだけど、自分の書いたものとあまりつながりを感じることがなくて、でも逆にそれで違う感情や感覚を得ることができるというか。何か違うんだけれどもしっくりくるというところがすごくおもしろかったです。

R:素晴らしいと思うのは、ミュージックビデオなのにそれよりもショートフィルムっぽく仕上がっているというところ。音楽がまるでバックグラウンドにあるような感じなので、本当にイアンとジェーンが映像としてすごくいい作品を作ってくれたと思っています。

__今回の来日公演、来年の新作アルバムのリリースに加え、今後の活動予定について教えてください。

E:ツアーをたくさんやる予定です。スーツケースで1年くらいずっといろんなところを回っているんじゃないかな(笑)。

R:今まで行った場所も含め新しい場所もいろいろ行けたらいいなと思います。

I:今アメリカとヨーロッパでツアーが決まっていて、あと日本にももしできれば来年の前半に戻って来れたらいいなと思います。約束はできないけど……(笑)。

__How was the show at the “Hostess Club Weekend”? Did you guys enjoy it?

Elena: Really great! We had a good time. We played some new songs, which was a bit scary. But I think it went well. And a few things went wrong, one of my pedals broke, but it didn’t matter. The crowd were lovely so it’s kind of one of those things where even if we had some technical things that were … it was still very fun, and I think the crowd were just really respectful and beautiful. It was great.

Remi: It was fun to be back in the same place as well. You know even though you’re on the other side of the planet for, I mean, just a show, it feels like you’ve seen it before. You’ve done it, so it feels very familiar. I liked that.

__Where does the idea of the new album’s title come from? What is the concept of the album?

Elena: We always choose a line from the lyrics to be the title. We kind of wanted something that would sum up every song in a way, kind of the general feeling of the album, which is quite hard because, you know, a lot of the time we’re trying to decide what to call something. And then you think, ‘Oh, it doesn’t really make sense’, like the whole way through or… but that really, see, that really did make a lot of sense. I think, in terms of just… there is strength to that title. It’s kind of saying, ‘I’m not disappearing, I’m not going anywhere’, even if some of the songs are, maybe, a bit more fragile and vulnerable, there’s obviously that kind of that running theme of loneliness. It’s kind of saying that no matter how lonely you feel, you’re still here. And so, there’s a kind of weird, slightly fighting, like a slight bit of aggression but also it’s delicate. It’s a delicate title, I think. It’s not like “Daughter! Rock ’N’ Roll band! We’re back!”

__How was working with producer Nicolas Vernhes?

Elena: Wonderful. Really great. I think it was nearly… we spent two and a half months in New York with him, and which for us, was a real treat to be in New York, and to be in the studio. But I think working in a group for that long, we worked for a year previous to that in London, so going to New York and working in sort of the same room for 12 hours… sometimes 10-12 hours a day in the dark, with the same four or five people. There can be tensions that arise and people can get a bit stressed out. But, in general, I think it was a very happy atmosphere, and he really was somebody who I think, you know, because the album was co-produced with him and Igor, so there was kind of their different ways of working, which I think really made a lot of difference to the outcome of the record.

__So now the new album is done, but what do you think is the biggest difference between the first and second records?

Igor: It’s like, a difficult question in a way… It feels the same in a way, but also it is so different. From the process, to the way it sounds, to what it’s saying… but in a way it feels like, also, natural progression. And I think we know we’ve all grown a little bit older and we’ve become more comfortable with ourselves. It’s kind of like asking, ‘How did you feel 3 years ago, how would you compare yourself’. Oh, I mean, oh my God, all these things have happened in 3 years, and I guess it’s just a little bit tough but…

Elena: I think maybe, it all just comes down to just a bit more confidence. I think we are generally quite shy. We’re quite awkward as a band. I don’t feel like we are the most bandy kind of… you know I think we’re bit like “oh hello…” so I think in terms of just having confidence in what we’re making and the sound, was a great feeling. You know, to be able to say, we can actually make whatever record we want and whatever sounds we want on it, was awesome. So, I think it’s definitely it feels like we took some of those avenues that, maybe we wouldn’t have done on the first one,

Remi: It seems to capture, you know, well again we’re going back to natural progression, just… confidence, just maybe as people, how we kind of grew. This is, if we’re going to compare it to like, pictures … maybe “If You Leave” was a picture of how we were in 2012 and how we worked on the album, and this one is very much a picture of us as people and musicians in 2014 and 2015. Again, that’s the reason we don’t really think about it. Just because, it was made in a natural way, because we didn’t want to force both, or even the EP, just happened to grow.

__I think the lyrics Elena writes are somber. In what kind of environment do you write lyrics, usually?

Elena: It really depends. It’s very much alone and, usually,…in the dark. But it’s strange because it comes from anywhere. I’m not somebody that really sits down and says I’m gonna write that song today, about this, or whatever. I’ll just wake up and, just be like let’s go, write write write! It kind of sometimes takes over my life in ways that, you know, it’s kind of hard to explain how the process really works. It’s just one of those things, where you kind of pick an idea out of the air…but yeah, they are, very personal and they really come from a place inside.

__How do you guys keep the balance between those lyrics and sound?

Igor: I think, it’s something that we’ve worked on from a day one of working with Elena. By now, it’s kind of more instinctive. It’s definitely something that I’m constantly working on, and talking about, and thinking about and there’re still even arguments over that, with this record as well, in terms of, you know, what did the song mean, and what the music is doing to the meaning of that song. Because there’s both things exactly, for us, emerging the music and the lyrics is kind of the idea that it becomes something a bit more cathartic, and a bit more uplifting, in that sense where you take that sort of sadness and that darkness and you make it into something a bit more positive and beautiful, exactly. And, sometimes that means the music needs to contrast quite drastically with what’s being said in the lyrics. You know, we played a lot with those kinds of elements.

__You’re using Sara Shaw’s painting for your album’s artwork. Why did you guys pick her artwork for the album’s cover?

Igor: Because it’s beautiful! I found her, just, through… my girlfriend runs an art gallery, and she does a lot of art fairs, and through that, she brought her catalog and that was in it and we loved it. I was kind of really working on the record, and was already sort of collecting visual ideas, just to see what felt like it was sticking to the music and just trying to be inspired. Basically, a lot later on we kind of, while we finish the record, and it’s like ‘ok let’s start thinking of our artwork, we know what the album is sounding like’, and we started really talking about it and discussing it. But it was very easy because, when we got in touch with her, she actually really liked our music and said she had been inspired by it, even with her own paintings. So it just felt like a good connection, and the way of doing it. I wouldn’t say that it’s like the painting is telling the story of the record. It’s more like what’s nice about, it is the feeling of it. There’s all these colors, but it’s also quite dark in the background and you can sort of get different things out of it, people see different things through it.

__Let’s talk about your music videos. How did the collaboration happen?

Remi: They all came from when, again, we were doing the album, and still working on it, and I think we all had a sense of, for this album, we really want it to kind of collaborate a lot more with videos. On the first album, our very first music video was made by Ian and Jane and we really liked them, so we decided to work with them again. Elena sent a few lyrics from the songs to Ian and Jane, who then passed them on to a friend of theirs, who is a short story writer, and so it was very much his interpretation of the lyrics that then became Ian and Jane’s interpretation of the short stories. So it’s this kind of amazing circle of creativity, which I like. Also the idea of making… all the videos were shot in the same location in 3 days or 4 days. It’s kind of the idea making multiple videos together, for that consistency, and kind of making sure… it just made sense and I think we were all very happy with them.

__Do you think people will gain new perspective, or ideas, from the music or by watching those images?

Elena: Yeah, it’s interesting because, I feel like the first video is very much related to the song, in terms of the story of “Doing The Right Thing”, which is the song for the first one. It feels like it really relates to what the song is saying. And the second video, I feel, the character kind of embodies what the lyrics are saying. So it’s kind of like shifts from being a story, to kind of being just a human embodiment of a feeling, which is really, really cool. I’m really grad that they did that. And then the third video, which isn’t out yet, is kind of very separate. The lyrics that I wrote, and the story in the video, are not really that connected but, it’s still… when I watched it after the shoot, which was great, but… you do get a different feeling, a different sense, in the songs, especially the third song, which is called “How”, which the video will be out about the time the album comes out. It’s kind of really interesting because you do get a different sense in that song, and through watching the video, which maybe you wouldn’t get if you didn’t.

Remi: Yeah, what’s amazing is that those videos, I think even though they’re supposed to be music videos, are maybe more short films than anything else. You can literally just watch them on their own, and in a way then, the music is more in the background. It’s all about what happens in the video and how they are made and … I mean, Ian and Jane, well done. They are fantastic.

__Now that you guys have performed in Japan, and your new album will be released next year, what’s next? Do you guys have any plan already?

Elena: Lots of touring. Living out of a suitcase for about a year maybe…

Remi: We are going back to bunch of places we’ve been before, exploring some new grounds.

Igor: We are going to the US and going to Europe. Hopefully we’ll come back to Japan in the first half of the next year, hopefully…but we can’t promise… we can only hope!

[UPDATE: 英訳を追記(2016.4.12.15:55)]

(2015年11月25日、ホステス・エンタテインメントにて)

取材協力:Hostess

インタビュー・文:小林香織
1994年生まれ。青山学院大学総合文化政策学部在籍。インディ、ポップ、アメリカのカルチャーなどを担当。

通訳:原口美穂

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■リリース情報
Artist:Daughter
Title:Not To Disappear
label:4AD / Hostess
Number:BGJ-1008
Release date:2016.01.15
Price:2,400円+税
※ボーナストラック1曲、歌詞対訳、ライナーノーツ(村尾泰郎)付

01. New Ways
02. Numbers
03. Doing The Right Thing
04. How
05. Mothers
06. Alone / With You
07. No Care
08. To Belong
09. Fossa
10. Made Of Stone
11. The End *
* 日本盤ボーナストラック