ARTIST:
Say Lou Lou
TITLE:
Lucid Dreaming
RELEASE DATE:
2015/4/6
LABEL:
à Deux
FIND IT AT:
Amazon,
REVIEWSMay/12/2015
[Review]Say Lou Lou | Lucid Dreaming

 暗闇が背景のアルバムジャケットの左側にはブルネットのミランダが目を瞑った横顔、右側にはブロンドのエレクトラが虚ろな表情でどこかを見ている。”Lucid Dreaming”(明晰夢)とは、自らが夢であると自覚しながら見ている夢のことである。一卵性双生児である姉妹の姿を並べることで眠りながらも覚醒する意識を視覚化したかのようにも見える。

 双子の姉妹は父親がオーストラリアのロックバンドThe Churchのフロントマン、スティーヴ・キルビー、母親はスウェーデンのパンクバンドPink Champagneのカリン・ヤンソンであり、オーストラリアとスウェーデンの両国で育った。2012年の結成以来5曲のシングルを発表しており、ヴォーグ誌の「Artist of the Week」に選出され、英国BBCの「Sound of 2014」にノミネートされるなど、各方面から注目を集める中で、今回が初のアルバム・リリースとなっている。音楽活動をしていた両親、オーストラリアとスウェーデンという地理的にも文化的にも異なった環境、一心同体ともいえる一卵性双生児、どれをとっても特異なバックグラウンドである彼女達の創り出す音の世界は、眩暈を誘うような浮遊感、幻想的でノスタルジック、聴く者は正に明晰夢を見ているかのような感覚に陥ってしまう。

 Joanna Nordahl監督による今回のアルバム内の一曲「Nothing but a Heartbeat」のミュージックビデオは、Lars von Trier(ラース・フォン・トリアー)監督の映画『Melancholia』(2011)から着想を得たそうだが(1)、幻想と憂鬱を織り交ぜたかのような耽美かつ幽玄な世界観はSay Lou Louの楽曲と重なる心象風景を喚起させる。映画『Melancholia』は、巨大惑星メランコリアの異常接近によって終末を迎えようとしていた地球を舞台に鬱症状を抱える主人公を描くストーリーであるが、映像美と共に表現されるメランコリックで夢幻的な世界へと引き込まれてしまうような作品だ。ルネサンス期の画家アルブレヒト・デューラーの『メランコリアI』に描かれるようにルネサンス以後の中世ヨーロッパにおいては、憂鬱質(メランコリア)は芸術や創造の根源をなす気質と位置づけられていた。このような聖なる狂気、死の欲動に溢れた世界観は後のロマン主義、ダダイズム、シュルレアリスム、そして現代におけるカウンターカルチャーなどの文化現象にまで浸透している。

 収録曲「Nothing but a Heartbeat」以外にも「Julian」「Beloved」のような霧がかった世界にミランダとエレクトラの透き通った歌声とリバーブが響くようなイメージ、明るくもどこか暗く、静的で動的、夢幻的なイメージを喚起させる楽曲たちは、メランコリックな明晰夢を彷彿とさせる。また、冒頭の曲「Everything We Touch」でのサビ部分における色彩や明暗の表現、「Julian」や「Angels(Above Me)」でのストーリー性のある歌詞は、映像的な音の世界を想起させる。

 楽曲制作において彼女達のインスピレーションはどこからくるのだろうか。作詞の過程についてミランダが『Oyster』によるインタビュー(2)で次のように述べている。

“映画は作詞の私達のインスピレーションになるの。作詞をする時には古典的ではなく、説話的に考えるのよ。私達がやることすべては独学。作詞する時には、説話的に、そして映画の映像のように書くの、物語や風景とかね。この方法の方が言葉を繋げていくのが楽で、これ以外の他のやり方は知らないの。最近は夢想家にインスパイアされているわね”

 彼女達の楽曲においてイメージされる物語性、映像的な心象風景は、聴く者に虚ろに巡るそれぞれの明晰夢を思い起こさせる。そしてまた、目を瞑り、眠りにつく中で自分の存在が幻想の中に置かれていることを自覚しながらも見続ける世界(Lucid Dreaming)こそ、正に彼女達にとっての創作の源泉なのだ。

1)…UNCANNY News(http://uncannyzine.com/posts/21836)より
2)…Interview: Say Lou Lou From Oyster #103 (http://www.oystermag.com/interview-say-lou-lou-from-oyster-103)より

文・佐藤里江
1994年生まれ。UNCANNY編集部員。主にアート、映画分野を得意とする。青山学院大学総合文化政策学部在籍。