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ARTICLESApril/25/2015
On Beat! (11) by Chihiro Ito – Black Flag “Six Pack”
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 浮かれた時代ほど、闇は深くなる気がします。80年代からのアメリカの好景気で浮かれた世相の闇の部分の象徴のひとつが、アメリカのハード・コア・パンクの様にも思います。その中にあって、最も象徴的なバンドのひとつとしてBlack Flag(黒い旗=アナーキスト)があります。1976年、南カルフォルニアで結成されたこのバンドは「On Beat! (10)」でも書きました、Beastie Boysも影響をうけています。

 バンドを結成当初、すでにニューヨークのRamones、ロンドンのSex Pistolsも世にでていました。彼らは前に挙げたバンドをよりシンプルにスピードを早めた音楽、ハード・コア・パンクの象徴的な音楽でした。とてもメンバーの入れ替わりの多いこのバンドは1981年のHenry Rollinsがヴォーカリストとして参加した頃から、イギリスのBlack Sabbathなどの影響を受けた様な、ゆっくりしたダークな音楽も制作する様になります。1985年には、約30分のミニアルバムの『The Process Of Weeding Out』などの、全く歌の入っていない、フリージャズや現代音楽に影響を受けた様なアルバムも作成するなど、意欲的に変化してゆきます。

 多くのメンバーチェンジや音楽性の変化を通してもなお、Black Flagの音だなと思わせるのは、現在まで唯一のオリジナルメンバーである、ギタリストのGreg Ginnの演奏する音質やリズム、リフ(一般的には、ソロを引き立てる短い音の反復楽節と言う意味)なのかもしれません。彼はアマチュア無線の愛好家で、彼の作ったレコードレーベルSST(Solid State Transmitters=固形化した送信機) Recordsはもともと、彼がラジオ部品を販売するために設立した会社であったそうです。しかも、この事業でも彼は相当な成功を収めたそうです。また、数年間女性メンバーが在籍していた時期もあり、ベースのKira Roesslerが居た時のBlack Flagは評価も高く、2枚のみ発売されている、彼らの正規のライブ盤としても音源が残っています。また、ここのSST RecordsからはHüsker Dü(ハスカー・ドゥ)やSonic Youth、Bad BrainsやDinosaur Jr.、Soundgardenなどといった、アメリカのインディ・ミュージックで重要といわれるバンドが数多くのレコードをリリースしています。

 今回、紹介している”Six Pack”はシングル曲で彼らの代表曲のひとつです。歌をうたっているのは、3代目のヴォーカリストのDez Cadenaです。このシングルを発売した直後、Black Flagを最も象徴する、4代目ヴォーカリストのHenry Rollinsがバンドに加入します。彼が加入後、Dezはしばらくリズムギターにポジションを変え、脱退後は伝説的バンド、Misfitsに参加します。Henryに話を戻します。彼はワシントンD.C.のS.O.A(ステイト・オブ・アラート)というバンドから移籍しました。Henryのヴァージョンの”Six Pack”は同年発売された彼らのファーストアルバム『Damaged』に収録されています。ヘッドフォンで聴き比べると分かりますが、Dezの歌は食べ物に例えると、山椒(さんしょう)の粉を沢山食べた時に口がヒリヒリする様な感覚が耳に残ります。Henryのヴァージョンは胡椒(こしょう)の実を幾つも口の中で噛み砕いているかのような刺激的感覚が耳に残ります。

 Henryはこの後1986年のバンドの解散まで、ヴォーカルをつとめます。彼はその後続く、Rollins Bandで見られる、裸足、黒い短パンのみ、タトゥーの沢山入れていある体を見せながら歌うといった彼のこのスタイルはこの間に形成されたものだと思います。彼は現在もミュージシャンや役者やスポークン・ワードなどで活動を続けています。面白いエピソードとして、彼は1日2時間のトレーニングを欠かさず行っており、体調管理の為にお酒をや大好きであったコーラを一切飲まなかった時期があり、公私ともに肉体を酷使するというこだわりがとてもハードだなと思った記憶があります。Henryはテレビのインタビューで「喫煙や麻薬、アルコールを摂取しない。快楽目的のみのセックスをしない」というのが基本的な考えのストレート・エッジ の考え方とは違うと言ってたのを覚えています。

 このバンドの表紙やフライヤーは、9割以上が「On Beat!(7)」のSonic Youthの回でも少し紹介しました、Raymond Pettibon(1957- )の描いたものです。彼はGreg Ginnの弟で、初代ベーシストでしたが、1年たたないうちにに脱退しています。最近は現代美術の画家と平行して、Black Flagの初代ヴォーカリストでCircle Jerksの創始者のKeith Morrisの新しいバンドOFF!やFoo FightersのCDの表紙、Red Hot Chili Peppersのミュージック・クリップのアニメーションを作品を提供したり、沢山の画集をだしたり、精力的に活動を行っています。

 彼らの活動期間は1976-1986年の10年と、2013年にBlack FlagとFlagという2バンドとして再結成し現在にいたっています。Black FlagのメンバーはGreg Ginn (1代目ギタリスト)、 Ron Reyes (2代目ヴォーカリスト)、 Dale Nixon=Greg Ginn(bass)、Gregory Moore (drums)です。FlagのメンバーはKeith Morris (1代目ヴォーカリスト)、Chuck Dukowski (3代目ベーシスト)、Dez Cadena (3代目ヴォーカリスト)、Stephen Egerton (guitar)、Bill Stevenson (5代目ドラマー)です。

 2013年以降はHenry Rollinsは抜け、グラフィック面もロゴマークはそのままに、Raymond Pettibonのイラストは今のヴォーカリストのRon Reyes(2代目のヴォーカリストでもある)の描いたイラストに変わっています。また、2015年現在は更にメンバーが変更しています。

 西洋絵画の世界では、黒を使うことはタブーとされています。それだけ、この色を使う事は難しいとされています。古典的な画家でも、黒色を多く使用しているのは、ゴヤくらいです。Black Flagの黒と言う色を思うと、僕はこの色の事を考えます。

文・画:伊藤知宏
1980生まれ。阿佐ヶ谷育ちの新進現代美術家。東京、アメリカ(ヴァーモント・スタジオ・センターのアジアン・アニュアル・フェローシップの1位を受賞)、フランス、ポルトガル(Guimaranes 2012, 欧州文化首都招待[2012]、O da Casa!招待[2013]、CAAA招待[2014])、セルビア(NPO日本・ユーゴアートプロジェクト招待[2012、2014])、中国を中心にギャラリー、美術館、路地やカフェギャラリー、畑などでも作品展を行う。Panphagiaディレクター。6-8月まで、スイスのRED ZONE GALLERYで作品展予定。東京在住。”人と犬の目が一つになったときに作品が出来ると思う。”

HP: http://chihiroito.tumblr.com/

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Artist: Black Flag
Title: Six Pack
Release Date: June 1981
Label: SST Records