EVENT REPORTSMarch/23/2015
[Live Report]Sugar’s Campaign “〜FRIENDSリリパ〜”
15032307

 本日(2015年3月20日)の会場となった代官山UNITは開演前から多くの人で賑わっていた。平日の夜ということもあって来場者は皆リラックスした表情を浮かべていたが、それでもステージの上に浮かんでいるおなじみのシンボルマークを見ると興奮を隠せないようだ。Sugar’s Campaignにとって初のアルバム『FRIENDS』のリリースパーティが間もなく始まろうとしていた。

 ステージ横スクリーンには「Sugar’s Campaign 20th anniversary」と大きく映し出され、エントランスで配られるパンフにも「スピードスターレコードからメジャーデビューして早20年!」の文字(もちろん彼らのメジャーデビューは去年の話である)。『ネトカノ』リリースパーティの際は「誕生日」をテーマにライブを展開した彼らは、今回も来場者を楽しませ、シュガーズの世界に取り込んでいく様々な仕掛けを施していた。

15032307_3

 開演前から目を引いたのは、パッド等の機材に加え、ドラムセットとベースとギターの配置。いつもと一味違う大所帯のバンド編成について期待まじりにささやく声がフロアのあちらこちらから聞かれた。そんな静かな興奮も最高潮という頃、ステージが暗転し、白スーツに身を包んだSeiho、Avec Avecとバンドメンバーが登場。間髪いれずプレイするのはもちろん「ホリデイ」。迫力あるドラムのイントロ、アレンジされたギター等、まさに生演奏にしかない魅力が発揮され、原曲とはまた違う圧倒的な雰囲気に会場は一瞬で引き込まれた。このまま畳み掛けてくるのかと思いきや、なんと舞台袖からマイクを持って出てきたのは「20年後のakio」ことスピードスターミュージックの社長。Seihoが、「あきお、20年の間にだいぶ歌えへんようになったんやな」と、しっかり関西人らしいオチをつけて『FRIENDS』リリースパーティの幕が上がった。なお、彼らはライブ終盤までこの日のライブを「メジャーデビュー20周年記念ライブ」として展開していく。

15032307_7

 そんな寸劇が終了してからやっと、akioの息子ことakihiko(akio本人)が何故かヒップホップのスタイルで登場。「ホリデイ」「Big Wave」を伸びやかに歌い上げた。縦横無尽にステージを駆け回り、1人1人に笑いかけながら楽しそうに歌う彼のパフォーマンスは今回も(20年経っても)健在だ。

15032307_6

 舞台俳優のように深々とお辞儀をした彼と入れ替わりに登場したのは、1人目のゲストボーカルmomo。彼女のメロウな歌声がぴったりのバラード「It`s too late」を披露した。ここで横のスクリーンにはAvec Avecの娘、もなみちゃんと彼のホームビデオが映し出される。父親を見て泣き出すもなみちゃんを見て「20年前から嫌われてるやん〜」と、UNITにいる全員の顔が緩む。思いもしない仕掛けの連続に観客は驚かされっぱなしだ。

15032307_4

 続いて登場したのは、20年の時を経て大女優になった2人目のゲストボーカルIZUMI。「いや〜シブカル祭とか懐かしいよね」と言いつつ、歌ったのはもちろんシブカル祭テーマソング「有名な映画のようにラブリーな恋がしたい」。この楽曲はすでにファンの間ではネトカノに次ぐアンセムとなっているのか、盛り上がりもここ一番という印象だった。そして、akioがステージに戻り「パラボラシャボンライン」へ。Avec AvecとSeihoもコーラスに加わり、楽曲を彩った。

 ここで一旦、ステージ上のメンバーは退出。何が起こるのかと思えば、またも横のスクリーンに映像が登場。なにやら今回は20年後を想定したドラマ仕立てらしい。5年間お客さんが来ないバーのママをやっているSeiho、そこでジンジャーエールを飲むAvec Avecに加え、なんとDancinthruthenightsの2人(tofubeats、okadada)が店に入ってくる。tofubeatsはフラワーアレンジメントのセミナーに、okadadaは大工として第3六本木ビルの建設に精を出している設定。

15032307_2

 関西弁が飛び交う4人の寸劇を前にして笑いが会場を包んでいたが、ふと気がつけばAvec AvecとSeihoの2人がステージに戻ってきており、突如重たいビートが響き渡る。そこには先程動画で笑いをとっていた姿とは程遠い、世界にまで足をかけるトラックメイカーとしての2人がいた。この瞬間で空気はガラッと変わり、先ほどまでの雰囲気は一気に覆る。この落とし込み方はシュガーズ以外には出来ないと舌を巻くパフォーマンスだった。「Moon Prism」「I Feel Rave」とお互いの代表曲がプレイされるとなれば、これまでニコニコしていた観客もじっとしてはいられない。ダンスフロアと化したUNITに、2人も応えていく。

 袖からmomoも登場し、披露されるのはもちろん「おしえて」。去年のマルチネレコード主催イベント「東京」でも見せてくれたakioとのデュエットが沁み渡る。フロアのあちこちからこの名曲を一緒になって口ずさむ声が聞こえた。照明が真っ赤になり、怪しげな子供の笑い声が響く。「放課後ゆうれい」だ。momoとakioの掛け合いが可愛らしい。アウトロでSeihoが弾くギターソロも会場を大いに湧かせていた。アシッドなナンバー「香港生活」もやはり昔から人気のある曲、ゆっくりと気持ちよさそうに身体を揺らす様が多く見受けられた。

15032307_5

 「香港つながりということで」と、2人が紹介したのは3人目のゲストボーカルで中国からはるばるやってきたSherry Li。中国語で挨拶をするSherry Liの言葉を、20年後には発明されているという設定の自動翻訳機を使って難なく理解する2人。20年後には飛行機はなくなり、中国へは球体に乗って瞬時に移動できるそうだ。披露されるのはもちろん「夢見ちゃいなガール」。少しオリエンタルな雰囲気も漂うこの楽曲はやはり中国語の歌詞が光る。腰を揺らして楽しそうに歌うSherry Liに向かってフロアから「ウォーアイニー」という叫び声が飛んだ。そして、これまでの凝った演出とくらべるとやけにakioがあっさりと「最後の曲になりました~」とアナウンス。「となりタウン」を熱唱し、全員が手を振りながらステージを後にした。

 アンコールを求める手拍子が鳴り止まない中、再び右手のスクリーン上にAvec AvecとSeihoが現れた。今度は楽屋で、今日の来場者にお礼を述べ、こちらをしっかりと見ながら話し始める。「これからの20年、しんどい時も楽しい時もあるやろうし、短いようで長いと思います。でもSugar’s Campaignは、何があっても変わらずこのままやっていけたらと思ってるんですよ。メジャーデビューして、音楽を売っている人達と一緒に仕事することによって、そういうことを一緒に考えてくれるスタッフがいるからこそ、長く活動を続けていくことができるんだなってことを実感しました。俺らは恥ずかしがり屋やからいつも茶化してしまうけど、今日は僕らのこんなお遊びに付き合ってくれて、ありがとうございました。20年後も応援よろしくお願いします!」。20年後のライブという設定の理由が明かされた。メジャーという新たな世界に立った2人からの感謝の言葉に、拍手が巻き起こった。

 いつもの衣装に着替えた出演者達が出てくると、歓声と拍手はさらに大きくなる。そんな来場者に向かってSeihoが「じゃあ最後にみんなでワイワイしましょう」と言い、自分達もマイクを持って前に出てきた。歌うのはもちろん「ネトカノ」。ファンの思い入れもひときわ深いこの曲が始まると、どこからともなく風船が現れて宙を舞い、ラララと合唱する声が響き、ステージもフロアも言いようのない多幸感に満たされた。

 本サイトインタビューで、彼らはこんな事を語っていた。

“チケットを買った瞬間から「あー、今日よかったね」って言って帰る瞬間までを演出するバンドになりたい。(中略)Sugar’s Campaignはサーカス団みたいなもので、SeihoとAvec Avecはシュガーズではないんです。SeihoとAvec Avecが脚本と演出を手がけている組織がシュガーズなんだっていう”

それを思うと、今回のライブでもそこかしこにちりばめられていた様々な仕掛けや演出にも合点がいく。本当に、バンドのライブというよりも舞台に近く、演奏を見せられているというよりもシュガーズの世界観にこちら側が引き込まれていっている様な不思議な感覚の残るリリースパーティだった。来場者の多くはきっと帰りの電車の中で20年後について考え、これから先も Sugar’s Campaignの音楽が自分の傍にある事をぼんやりと願ったことだろう。

写真:渡辺裕樹

取材・文:野口美沙希
1992年生まれ。UNCANNY編集部員。青山学院大学総合文化政策学部在学し、音楽藝術研究部に所属。現在ウェブジンのノウハウを勉強中。