EVENT REPORTSFebruary/10/2015

[Event Report] American Apparel “SuperStar Drag Queen Willam Belli at fancyHIM”

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 身近な存在でもあまり知られていないこと、というのは世の中にたくさん存在する。例えば、American Apparelというファッションブランドを知っていても、彼らが、移民政策の改善を求める”Immigration Reform”と、同性愛者の基本的人権として”Gay Rights”を最も大きなイシューとして取り組んでいることは、あまり知られていない。また、American Apparelのすべてのタグには、”Made in Downtown LA”と記されている。これは発足当初からよく知られたことであるが、American Apparelが、安価な労働賃金で雇用できる場所で生産するのではなく、地元LAでの現地生産や現地雇用などをポリシーとしていることを表明したものである。
 
 2014年12月27日、そのAmerican Apparelがサポートを務めたイベント「American Apparel “SuperStar Drag Queen Willam Belli” at fancyHIM」が新宿で開催された。ゲストとして招かれたWillam Belliは、現在アメリカで最も著名なドラァグクイーンとして知られており、俳優、アーティストとして活動している。American Apparelとの関わりは、コラボレーションTシャツを制作し、LAストアにてサイン会を兼ねたイベントを行ったことから始まった。同イベントは、全米で大きな反響を呼び、彼女とのプロジェクトはそのまま継続されることが決定、そして今回来日する運びとなったという。また、母体となった「fancyHIM」は、新宿二丁目で毎月開催されているイベントであり、LGBTカルチャーを代表するクラブイベントのひとつとして知られている。

 イベントは、凍えるような外気とは対称的に、会場は満員となり、まさに熱狂的な一夜となった。ゲストパフォーマンスを行ったWillam Belliは圧倒的な存在感を放ち、”SuperStar Drag Queen”の名称そのままのオーラを放っていた。

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Interview with Willam Belli (2015.1)

__今回の来日にあたり、日本の第一印象はどのようなものでしたか。

アメリカのような白人の多い社会で育っていると、海外に行くときに白人の自分がマイノリティの人間になるのが不思議に感じます。

__「性の解放」を掲げ、世界中で公演を行っていると伺いましたが、あなたにとって「性の解放」はどのような意味を持ちますか。

私にとって性の解放とは、大人の話を恥ずかしがらずに話せることです。これは皆がしていることです。例えば、電車の中であなたの斜め前に座っているおばあちゃんも、人生の中で一回くらいはアレをして喉を詰まらせた経験があるでしょう。

__ドラァグクイーンについてお聞きします。私が調べた文献では、女装が「女になること」を目指しているのに対し、ドラァグは、「女を遊ぶこと」、すなわち、女を超えて、女でも男でもない何かになること、という記述がありました。それが、自己肯定とアイデンティティ獲得の手段のひとつであるとの指摘でしたが、ドラァグクイーンの役割や存在についてご自身では、どのように考えていますか。

私がドラァグクイーンになるのは、キラキラしたものが好きで、昔から『プリティ・ウーマン』は、キャリア・ゴールについて語っている映画だと思っていたから。女にはなりたくない。ヴォルケーノになりたいのです。

__アメリカでは、2004年のマサチューセッツ州に続き、2011年にニューヨーク州、最近では、イリノイ州と、18の州と地域で同性婚が認められたと聞きます。2004年以降、アメリカでは、LGBTの環境は変わりましたか。

少しずつ同性愛者に対する考え方は変わってきていると思いますし、歴史的な社会変化が起きると、人は「良い」とされる側面に寄りたくなるのです。人権は権利であるから。

__過去、セクシャルマイノリティが弾圧された悲劇的な歴史があります。いまだ差別や偏見が残っているのが現実だとすれば、どのようにすれば、セクシャルマイノリティの存在を許容できる社会になれると思いますか。

新しいことは受け入れられるまでに時間がかかります。例えば宗教。ほとんどが最初は、誰かと異教徒か頭のおかしい人として始まったでしょう。

__今後、アメリカンアパレルとのコラボレーションの企画があったら教えてください。また、何かテーマやメッセージがあれば教えてください。

できれば自分がプリントアウトされているビーチタオルを出して、夏の間中、男性に私の上で寝そべってほしいです。

Translation by Moe Ishibashi​
Photo by Yasuaki Komatsu

参考文献:セクシャルマイノリティ教職員ネットワーク編『セクシャルマイノリティ 第3版』(明石書店、2012)

インタビュー・文:Yuki.M