ARTIST:

Kensei Ogata

TITLE:
Her Paperback
RELEASE DATE:
2012/9/26
LABEL:
Dead Funny Records
FIND IT AT:
Amazon
REVIEWSNovember/06/2012

【Review】Kensei Ogata | Her Paperback

 talkはメンバーが20代前半という若さながら、著名サイト『路地裏音楽戦争』の若手ロックバンド特集におけるピックアップ、今年の9月に東京で行われた<Eternal Rock City 2012>への参加など、現在最も注目されるインディ・バンドのひとつだ。そのtalkのフロントマンを務めているKensei Ogataの初の2枚組となるフルアルバムがリリースされた。1枚目にはKensei Ogataが自宅で録音した、公式サイトの解説をそのまま引用すれば、まさに「宅録ベッドルーム・ポップ・サウンド」が10曲収録されており、2枚目にはスタジオでドラムとアコースティックのみで録音された3曲が収録されている。

 talkといえばシューゲイザーやパワーポップを組み合わせたポップでキャッチーなメロディーの上に轟音ギターサウンドで味付けをするような印象だが、このソロアルバムは筆者の中では、“talk+α”のような存在だ。

 収録曲はそれぞれが一種の同質的な感覚を持っており、M1「On the Beach」のイントロから疾走感を帯びたキャッチーで煌めくポップなサウンドが鳴り響き、それがM10「My Small Garden」にまで続いていく。そして、そのどこか哀愁を感じさせるサウンドは、聴く者に独特な浮遊感や空気感を与える。それは、シューゲイザーが醸し出す特異な感覚に似ており、The Boo Radleys、Chapterhouse、Slowdiveなどが持っているものに限りなく近い。

 「あらかじめポスト世代」というある種自虐的なコピーもまた印象的だ。ほとんどのものが出尽くしたような今となっては、すべてが「ポスト〜」となるのだろうか。しかし、大抵のものは過去の作品のアップデートとも言える。つまり、過去の作品の影響のもとに作家の心情や時代背景が作品に投影され、そして、テクノロジーによる変化が加えられると考えた方が自然だろう。

 その「あらかじめポスト世代」であるKensei Ogataの本作は、とにかく煌めいている。そこには、2012年というこの時代に生きるごく普通の22才の日常や心情が目一杯に詰まっている。

文: 工藤翔平


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