EVENT REPORTSMay/23/2014

[Event Report]Prom Presents Ghost Coast feat. Mykki Blanco + T.E.A.M.S (Oak opening after party)

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 芸術家は、時代の何歩先も進んだ理解の難しい何かを提供する。極めて複雑に思考する者もいれば、全くの直感で一気に創作する者もいる。美術や音楽などの芸術が哲学と接続するのは、その作家という個から生み出された作品が、どのくらい世界(あるいは、社会)へと接続するものとして存在しうるのかを、言葉で語りだそうとするからとも言える。何よりも先行する芸術は、まずは小さく密度の高い熱狂から始まる。そういうものは時々、アンダーグラウンドと呼ばれたりもする。そしてそれらは、熱度の高いままその塊が大きくなっていく場合もあれば、時間軸として捉えると、それが一定の規模のままであっても、長期間に渡り評価され、結果的に、何万人、何百万人に影響を与えるものもある。

 先月、ニューヨークから東京へと来日したクィアラップ・アーティスト、Mykki Blancoは、ラッパーでありながらも、そのルーツは自身が語るように詩人である。2012年にリリースされたミックステープ『Cosmic Angel: The Illuminati Prince/ss』は、発表と共に様々な音楽メディアで紹介されるなど、現在世界中から静かに、そして熱い注目を集めている。同じく来日したT.E.A.M.Sは、2011年にデビュー・アルバム『Dxys Xff』をリリースしており、日本のレーベル〈PLANCHA〉からは国内盤がリリースされている。

 彼らを招聘したAvery Alan率いる〈Prom〉は、アンダーグラウンドの媒介者としてその活動を続けている。これまで、Le1f、Heems、Total Freedom、Kelelaといった優れたパフォーマーたちを日本に招聘し、彼らは皆、帰国後も時間を追うごとに評価を高め続けている。また、今回開催された「Ghost Coast」の会場、Trump Roomは、渋谷の路地裏に位置し、毎週末、先端に位置する東京のユース・カルチャーが表出している場所としても知られている。

 会場は非日常の高揚感に溢れ、一見して多様な国籍から個性的な観衆が集まっていた。そんな中でも、Mykki Blancoの存在感は際立ち、そのライブは過剰なほど情動的なものであった。後ろに控えるブースには、T.E.A.M.Sが構えており、彼らの攻撃的なライブの姿勢に一切の隙は見られなかった。パフォーマンスは、終始アヴァンギャルドで情熱と創造性に満ちており、Mykki Blancoは、観衆の中へと何度も割って入り、予測不能で混沌とした状況を何度もつくり出していた。一方、T.E.A.M.Sが吐き出すサウンドはどれも攻撃的で、縦横無尽に暴れるMykki Blancoに対してしっかりと後ろで構えるその姿は、本人の風貌も相まって十分な貫禄を見せていた。

 今、日本で彼らを知る者はまだ少ないのかも知れないが、いずれ多くの人々に発見されていくのだろう。アンダーグラウンドの現場には、いつも観る者の予想を上回る常識を超えた何かが存在している。

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Photos : Ching-yen

Event Curator : PROM

More Info: OAK

取材・文: T_L