ARTIST:

The Wedding Mistakes

TITLE:
Virgin Road
RELEASE DATE:
2014/2/14
LABEL:
self-released
FIND IT AT:
REVIEWSApril/01/2014

【Review】The Wedding Mistakes | Virgin Road

 若手トラックメイカーとしてすでに確固たるキャリアを築いている、LASTorderとMiiiによるThe Wedding Mistakesというポストロックプロジェクトが誕生したのは必然のことだったのかもしれない。ポストロックの定義は曖昧なものであり、本人たちもそこに関してジャンルをはっきり線引きする意識は持っていないようだが、ざっくりと定義するならばそれはロック以降の音楽(ポスト〜)のことであり、ソースが一応きちんと明記され比較的信用のおける英語版のウィキペディアによれば、それは下記のように定義されている。

”Post-rock is a subgenre of rock music characterized by the influence and use of instruments commonly associated with rock, but using rhythms and “guitars as facilitators of timbre and textures” not traditionally found in rock. Post-rock bands are often without vocals.”

 超訳すれば、ポストロックとは、いわゆる伝統的なロックっぽくないロックであり、しばしばヴォーカルすらない、という感じだ。本作を聴くと、確かにロックとも言えるし、過去にポストロックとタグ付けされた作品の要素を垣間みることができる。しかし、皆が知るポストロックをさらに前進させたポストロック、つまりポスト・ポストロックと言う方が正しいような気もするし、とにかく次世代のトラックメイカーがつくった、新しい感覚の音楽であることには間違いないだろう。それぞれが、着実にキャリアを積んでいく中で、何か新しいことや二人で制作することによる予測できない化学反応を楽しむことを求めたこのプロジェクトの誕生は、冒頭で述べたようにまさに必然であったように思える。

 いくつか、収録曲を紹介していこう。本作の幕を切るのはSoundCloudで最初に公開された「Preface」。不規則なベース音がまるで音の鼓動の様に繰り返されていき、その上に歌声のようなメロディが乗っていくというまさに両者が持つ技術の真骨頂とも言えるトラックである。「顔」という身体的なワードがタイトルに含まれているが、その名前にふさわしくアルバムに通っている血の流れや心臓の波打ち、手足や指先の震え(もちろん実際に流れ波打っているのは音そのものなのだが)といった躍動を感じる曲になっている。また、アルバムタイトルでもある「Virgin Road」では、音が一歩一歩、呼吸や足跡をまといながらこちらに向かって歩いてきているような印象を受ける。輝きを増しながら少しずつ届けられる音の集まりに、いつのまにか彼らの世界へと引き込まれていく。「Her Mistakes」では、静かに語りかけるようなヴォーカルの旋律が流れていき、「Virgin Road」同様ドラマティックな展開を見せる。続く「So Hot」では、タイトル通り静から動へとガラッと表情を変え、ロックの持つ激情的な部分をどこかクールなループと共に表現しているのが印象的だ。「Marriage for Dance」、「Through All Eternity?」は、エレクトロニック/ダンスミュージック的なポストロックが展開され、アルバムの終盤へ向かって感情を剥き出しにしたような激しさが増幅し、そのピークを迎える。そして、最後の「Bluemoon」でアルバムは幕を閉じるのだが、ボーナストラックとして収録されたHercelotによるリミックス「Marriage for Dance (Hercelot Remix)」は、ある意味The Wedding Mistakesのふたりよりも自由奔放に、まるでファンタジーのような独特の音の世界を構築しており、アルバムを見事に締める役割を果たしている。

 このように、アルバムを通して、彼らの音楽は、音の粒一つ一つに動きと呼吸があり、それらは一方向に聴く側の身体と心を目指し、何かを受け取らせるのではなくただ寄り添うように響いている。技術的な裏打ちも重要だが、このアルバムの本質は、静かなる感情を表現していることだ。このアルバムも、まさに”Post-rock bands are often without vocals”と言うように、ヴォーカルのいないアルバムだが、ほぼ言葉を使わず、まさに音だけで様々な感情を表現している。表層的にはクールに見えても、その深層ではたくさんの感情が存在している、この作品からはそういった彼らの嘘偽りのない声が聴こえてくるのだ。

文・野口美沙希
1992年生まれ。UNCANNY編集部員。青山学院大学総合文化政策学部在学中。音楽藝術研究部に所属し、ジャズを中心に聴いている。