ARTICLESNovember/09/2013

Featured | Artist File 5 : tofubeats

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 11月に入り、いよいよあと2週間後、今月24日(日)に開催が迫った<UNCANNY LIVE SHOW 2013>。Teen DazeCarpainterMadeggThe Wedding Mistakesと4回に渡ってお送りしてきたこのArtist File特集もこれが最後となる。今回紹介するアーティストは、11月13日発売の1stシングル『Don’t Stop The Music』にて遂にメジャーデビューを果たすtofubeats。彼は、これまでインターネットを中心に、正式な数は不明だが少なく見積もっても100曲以上の楽曲を発表する一方、多くのアイドルのリミックスやプロデュースを手掛けており、歴史を総ざらいするためには1冊の本ができてしまうくらいのスペースが必要になるため、今回は<UNCANNY LIVE SHOW 2013>編と銘打ち、現在の彼や、今の音楽シーンに直接繋がってゆくような楽曲を筆者の独断とで順を追って紹介していきたい(ちなみに、ibonne、dj newtown名義を含めた彼のディスコグラフィはオフィシャルサイトですべて網羅されている)。

 彼が音楽に目覚め、トラックメイクを始めるきっかけは中学1年生にまで遡る。そのきっかけとは、あちこちで彼が言及している通り、BUDDHA BRAND「人間発電所」を友達から聞かせて貰ったことである。また、初めてお小遣いで買った新譜はSoweluの『Geofu』だそう。どちらも音楽に目覚めるきっかけとしては特に珍しいわけではないが、「BUDDHA BRANDもSoweluも好き」という感覚こそが彼の歴史を紐解く上ではとても重要な感覚であり、彼の作品の土台になっているのではないだろうか。そのような「宇多田ヒカル・MISIA以降の感性」で彼はMPCやサンプラーなどを使い、膨大な数の作品をインターネット上にアップしていく。最初はibonneという名義で幾つかの音源を発表しており、ヒップホップmeets渋谷系なブレイクビーツで知名度を高めていく。

 そして2008年、現在も続いている日本最大のテクノフェス<WIRE>出演を機に、dj newtownという変名でも活動を開始、ネットレーベル〈Maltine Records〉にて作品を発表するようになる。dj newtownとしての初音源である『Flying between stars(*she is a girl)』は、テレビアニメ『マクロスF』の挿入歌「星間飛行」大胆にサンプリングしたと思われる、カットアップという手法を使った楽曲で、その後の自身のイメージを決定付けるだけでなく、〈Maltine Records〉やその界隈のクラブシーンも巻き込んだムーブメントを巻き起こしてゆく。ちなみにカットアップという手法は、2013年に共演することになるPara Oneが2008年に発表した浜崎あゆみ「Greatful days (PARA ONE Remix)」による影響が大きいと語っている。

 また同年、初リリースとなる、高校時代の音源を集めたプチ卒業制作的な位置付けの作品集「HIGH-SCHOOL OF REMIX」をCDRでリリース(現在はDOWNLOAD EDITIONが配信中)する。J-POP、クラブミュージック、ヒップホップなどを彼自身のセンスでまとめ上げ、ポップスとしてもクラブミュージックとしても説得力のある楽曲に仕上げるその手腕は大きな反響を呼び、翌年には南波志帆「はじめまして、私。-DJ NEWTOWN remix-」や、ももいろクローバー「ももいろパンチ (tofubeats remix)」などアイドル関連の仕事もこなすようになる(後に、南波志帆とは1stアルバム『lost decade』で共演)。

 その後も、tofubeats、dj newtown名義共に精力的なリリースを続けるが、dj newtown名義でリリースした「2005」、後に「水星」などで共演するオノマトペ大臣を迎えた「move your body」、「BIG SHOUT IT OUT」など、今の作風に直接繋がるような、歌やラップをのせた楽曲が発表され始め、「BIG SHOUT IT OUT」は後にiTMSダンスミュージックチャートで1位を獲得するという快挙を成し遂げる。〈Maltine Records〉初のフィジカルリリース作『MP3 KILLED THE CD STAR?』に収録され、後に2012年バージョンが無料配信されることになる「朝が来るまで終わる事の無いダンスを」が発表されたのもこの頃だ。また、彼はこの時期のインタビューで「トラックメイカーとしての目標は、クラブでも家でも聞けてかつ、ポップミュージックとして優秀で長く愛される曲を作りたい…って、普通すぎてごめんなさい!」(注1)というあまりにもブレない発言をしている。

 「BIG SHOUT IT OUT」や「朝が来るまで終わる事の無いダンスを」など、アッパーかつキャッチーな楽曲は、特に代表曲と言われるまでになった「朝が来るまで終わる事の無いダンスを」を聞いても分かるように、それらはtofubeatsの大きな魅力であることは間違いないが、UNCANNY的には2011年作の『Baby girl E.P.』あたりから発表されるメロウな楽曲を推したい。

 それまでのDJユースなカットアップハウスとは違い、チルウェイブやビートダウン、クラウドラップなどに接近した『touch』『スローモーション(ひみつの)/Slowmotion(himitsu no)』『このまま』『No.1』 など、本人がBandcamp感と表現した一連の作品は、その後の〜ウェーブシーンを予感させるような楽曲が並んでいるが、「touch」や「No.1」が『lost decade』に収録されたことからも分かるように、最先端でありながら普遍的な要素を兼ね備えている。またこの間、今やtofubeatsやMadeggらと共に次世代の日本の音楽シーンを引っ張っていく存在として注目されるようになったSeihoとのスプリットシングル『BIGGIFT』をVol.4 Recordsからリリースしており、両者一歩も譲らないアーバンブレイクビーツ合戦を繰り広げている。

 2012年には、一連のBandcamp作品の流れを汲みつつ、さらにJukeやTrapの要素を盛り込んだアルバム『summer dreams』を発表する。最近、本人がやたらとTwitterでつぶやいている宇多田ヒカル『First Love』収録曲を使ったと推測される「in my room」など、「HIGH-SCHOOL OF REMIX」の頃とは全く違うアプローチのサンプリングが炸裂したアルバムであり、第2期tofubeatsの集大成的作品と言ってもいいだろう。

 そして、その後は「水星 feat.オノマトペ大臣」の大ヒット、『lost decade』のリリース、メジャーデビュー、『Don’t Stop The Music feat.森高千里』リリースへと繋がっていくのだが、その辺りについては当サイトでインタビュー、アルバムレビューを行っているのでそちらを読んでいただきたい。

『lost decade』リリース時のインタビュー 2013/05/21

『lost decade』ディスクレビュー 2013/05/28

○『Don’t Stop The Music feat.森高千里』リリース時のインタビュー
*近日公開予定!お楽しみに!

 こうして振り返ってみると、今回紹介した楽曲が全体のほんの一部であるにも関わらず、とにかく幅広い音楽性で一見全くまとまりが無いように見えるかもしれない。しかし、オリジナル曲、サンプリング、リミックス、プロデュース作問わず、彼の楽曲には必ずtofubeats節が盛り込まれていると多くの人は感じているはずだ。筆者は文中で何度か「説得力」という言葉を使ったが、tofubeatsの楽曲がtofubeatsの楽曲たる理由はまさにそこにあると感じる。「イミテーションじゃなくてアンダースタンドしなければやらない」「他人にわかってもらえなくてもいいけど説明できるくらいにはそれをやる意味を理解していなければ、やらない」(注2)と彼自身が語ったように、どれだけ作る楽曲が変化していこうとも、そこに彼なりの「わかり」があり、アーティストとしてのプライドがある。先述したPara Oneや南波志帆や森高千里の例のように、影響を受けたアーティストと後に共演を果たす事が多いということも、それが単なる偶然や奇跡ではなく、彼のアーティストとしてのスタンスが一貫しているからこそ実現したものなのだ。

 11/24に開催される<UNCANNY LIVE SHOW 2013>では、国籍や年齢を超えたアーティストが共演してライブを繰り広げる。そこで鳴り響く彼の楽曲はどういった説得力を持って観客に心に響くのだろうか。ぜひその目で確かめに来て欲しい。

*注1 『tofubeats(mini)interview』http://sweety.jp/mimichan/
*注2 『ele-king vol.11』(Pヴァイン、2013)「<巻末インタヴュー トーフビーツ✕パラ・ワン>」(インタビュー:磯部涼 文:編集部) 187頁より

文: 豊田諭志
1990年生まれ、大阪出身。UNCANNY編集部員。青山学院大学音楽芸術研究部の前部長。

■イベント情報
Title: UNCANNY LIVE SHOW 2013
Date: 2013/11/24(Sun)
Open/Start: 4pm (-10pm)
Place: KATA + Time Out Cafe & Diner[LIQUIDROOM 2F]
Price: 3,000yen(Adv)* | 3,500yen(Door) | 3,000yen(Door/Student discount)**

*LAWSON(Lコード:77852)、イープラス、DISK UNION(SHIBUYA CLUB MUSIC SHOP/SHINJUKU CLUB MUSIC SHOP/SHIMOKITAZAWA CLUB MUSIC SHOP)、JET SET TOKYO、PLANCHA、LIQUIDROOM

前売りチケットご購入の方には、イベント記念ステッカー+スペシャル音源ダウンロードコードを当日プレゼント!

**学生の方は、受付で学生証の提示で特別料金当日券3000円となります。ただし、前売りチケット購入のお客様の入場を優先しますので、会場のキャパシティ上、当日ご入場出来ない場合があります。当日は、事前に公式Twitter等でご確認ください。

*イベント特設サイトはこちら

Live Act:
Teen Daze
tofubeats
Madegg
The Wedding Mistakes
Carpainter

Opening DJ:
Toyo D(MAC)
Funky Fresh Watanabe(MAC)

Artwork by buna

Special PR site design by ARK TYO

主催:UNCANNY
企画制作:UNCANNY/LIQUIDROOM
お問い合わせ:UNCANNY, LIQUIDROOM(03-5464-0800)